備えあれば憂いなし?
ホームルームが終わり、帰る準備をしているとふと窓を見ると雨が降っていた。
「……雨か」
雨が降るという情報を俺は持っていなかったので傘が無いということはなく、こういう時のために俺は折り畳み傘を常備している。デキる男なのだと悦にひたっていると梨久が近づいてきた。
「嵐臥傘ないの?」
「当然ある」
「……」
「傘を持ってない方がいるのかな〜?」
「何その言い方、持ってきてない僕が間抜けみたいじゃないか」
「そこまでは言ってない」
「思ってはいるのか!」
「………」
「嵐臥の裏切り者〜」
軽口を互いに言い合い、落ち着いてきた頃合いをみて、提案をする。
「悪かったて、まぁ途中までだけど一緒に帰るか?」
「え?」
断られるのかと内心ビクビクしていると、すごいスピードで頷いてくれたので胸を撫で下ろす。
「じゃ下いくか」
梨久は挙動不審になりながらも後ろを付いてきた。
大きめの折り畳み傘とはいえ一つの傘に、2人で入っていると、当然はみ出る。俺は梨久が濡れない様に梨久側に傾けて傘をさしていた。
「嵐臥今日はありがとう」
「どういたしましてと言っておこう」
「相合傘みたいだね」
「……そうか?」
思わないようにしていたことを梨久に言われ、面食らっていると、それを見越してたのか、意地悪そうな笑みを浮かべていた。
「じゃもっとそれっぽくしてみよっか」
というと俺の左腕に腕を組んできた。驚きのあまり、滑って転けそうになる。
(ちくしょう、距離が近い!)
物理的にも距離が近くなっているためか、心臓のポンプとしての機能が、オーバーヒート寸前である。傘の備えはあったが、心の備えはなかった模様。そんなことがバレないように気をつけて歩いた。
「俺、こっから電車だから傘持ってけ」
「貰えないよ、そうすると嵐臥はどうすんのさ」
「走る」
「尚更貰えないよ」
「よく考えろ俺とお前、どっちの方が体力ある?」
「……嵐臥だけどさ」
「そういうことだ、じゃあな。気をつけて帰れよ!」
と言い梨久に傘を押し付けて逃げる様に帰った。
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