僕と契約して、お弁当食べてよ

 4限目の英語も終わり、昼休みがやってきた。机を片付けていると弁当箱と水筒を持って、こっちに来ている梨久が横目に見えた。


「嵐臥、今日はお弁当なんだ?」

「おう!」


 母が、弁当を作ってくれているが、よく寝坊をするので、購買にお世話になることが多々ある。おかげと言うべきか、一通り食べ尽くすに至っていた。

 食べ始め、昨日のテレビ番組の話をしたりしていると、梨久がソワソワしている気がした。前みたいに梨久の話を聞き漏らしてもいないので、余計に分からなかった。


「気の所為だったら悪いけど、俺になんか言いたいことある?」

 梨久の体がビクッと反応したので、何かしらある事はわかった。


「………」

「話しずらいことだったなら悪かった」

「違うよ、いや、違くないけど」

 内心どっちだよと思ったが言葉に出さず待ってみる。

「……卵焼き食べてくれないかな?」

「俺が?」

「うん」

「梨久が俺の食べるんじゃなくて?」

「"僕の"卵焼きを食べて!」


 普段から梨久は俺の弁当の中身をよく、くすねるがこんなことを言うのが、初めてで戸惑ってしまった。しかし、何処が言いずらかったのか?と不思議だったが、何かしらあるのだろうと自分を納得させる。

 それから一言、言ってから卵焼きを口に放り込んだ。梨久が不安そうにこちらを見ているのを無視して味わう。甘さ控えめで、俺好みの味だった。


「すげー俺好みの味で美味しかった、もう一個貰っていい?」

「うん!」

「で、なんだったのこれ?」

「最近、料理初めてみたから、食べてみて欲しかっただけ」

「さいですか」

「これからもお願いするかも」

「任せろ!」


 嬉しそうに笑う梨久を見ながら、これからも梨久が作ったものがたまに食べれると思うと、役得だなと感じずにはいられなかった。

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