第9話

20場

真田が一人待っているところに、影山がやってきて声をかける

清水、陰から二人の様子を見ている


影山「遅くなってごめんね~待ったよね~」

真田「いえ。こちらこそ急にすいません」

影山「大丈夫だよ。それにしても珍しいね、急に会いたいだなんて。何かあったの?」

真田「うーん。まぁそのね…」

影山「本行き詰っちゃいました?」

真田「いや、あのぅ…ちょっと言いたいことがありまして…」

影山「なになにー? え? ていうかなんか固くない? いつもみたいにしゃべろーよ」


影山、顔をグイっと真田の眼前に近づける

真田、照れて顔をそらす。そらした先の清水と目が合う

真田、口パクで清水に「ヤバい」「かわいい」など訴えかける

清水、「しっかりしろ」などジェスチャーや口パクで伝える

真田、影山に向き直る



真田「実は…(慣れないポップな動きをしながら)バレンタインのお返しにお願いされてたバック買えそうにないんです!」


清水、あちゃーといった感じで天を仰ぐ


影山「そうなの? どうして? お金厳しい? ちょっと高かったかな?」

真田「え!? あの、そうじゃなくて。お店で売って無くて」

影山「そっかー」

真田「ごめんね」

影山「全然大丈夫だよ~」

真田「質屋とかなら売ってたんだけど、お古はさすがに嫌だろうなーって思って」

影山「お古はちょっとねー」

真田「だから別のバッグにさせてもらえたらと思うんです」

影山「そっか~じゃあぁ~こっちにしてもらおうかなぁ~」


といってスマホの画面を見せる


真田「これですね。わかりました!」

影山「よろしくね」

真田「はい」


影山の様子をみる真田

しばしの間


影山「どうしたの?」

真田「連絡しなくていいんですか?」

影山「連絡? 誰に?」

真田「別の人にもさっきのバックおねだりしてたでしょう? その人にも新しいバックのこと連絡して、同じバックを買ってもらわないと、計画がうまくいかないでしょう」

影山「計画? なんのこと?」

真田「まだ白を切るつもりですか? わかりました。出てきて下さい」


清水、二人の前に現れる


影山「清水君! いつからそこに!?」

清水「影山さんが来る前からずっと待ってましたよ」

影山「清水君、これは違うの!」

清水「僕にも真田さんと同じバックをお願いしていたじゃないですか! これのなにが違うっていうんですか!?」

影山「どうしてもこのバックが欲しかったから、二人にお願いした方が確実かなって? 現に真田君は買えないって言ってるわけだし。もし真田君が買えたら、その時は、清水君には別のにして欲しいって連絡するつもりだったわ」

清水「なんだそうだったんですか。(真田に対して)ほらー」

真田「ほらじゃなくて! そもそもですよ。恋人でもない人間に、バレンタインのお返しに、ブランドバックをおねだりするってのがおかしくないですか? しかも二人に!」

清水「たしかに!」

真田「でしょう? どうですか? この件に関して何か申開きはありますか?」


大きく息を吐く影山

ちらっと二人を見て、走り去っていく


清水「あ! 逃げた!!」


追いかけようとする清水


真田「(清水を制しながら)いいです、いいです。逃げたってことが、答えですよ」


追うのを諦める清水。落ち込んでいる様子



清水「影山さんがあんな人だったなんて…」

真田「小島さんのフォースを信じるべきでしたね~。あーあ、悪いことしちゃったな。小島さんに。最近なにしてるんだろ。元気ですかね?」

清水「あれ? 先生のとこにはあれから連絡きてないですか?」

真田「え? 清水さんとこには来たんですか?」

清水「えぇ。それで会ったら、変なサプリを売りつけられそうになって。それ以来ですね」

真田「マルチ的なことですか?」

清水「本人は違うって言ってますけどね。なんかボランティア団体に入ったんですって。で、サプリの売り上げも募金に回すって」

真田「それ怪しくないですか?」

清水「まぁ」

真田「で、どうしたんですか? 買ったんですか?」

清水「もう一度よく考えて下さいと。それでも自分に買って欲しいなら、改めて連絡をくださいと伝えました。もし、もう一度買ってくれと言ってきたら、その時は買うつもりだったけど、それで友人としての関係も最後にするつもりでした。けど、結局それから連絡ないですね」

真田「そうですか…いや~心配だな~連絡してみようかな」


真田、スマホを取り出し、通話をかけてみる

しばらくかけるがつながらない


真田「出ない」


スマホを操作し、小島のSNSアカウントを確認する


真田「あ、Xブロックされてるわ!」

清水「え? マジっすか?」


清水もスマホで小島のXアカウントをチェックする


清水「うわっ、自分もだわ」

真田「Xがブロックされてるってことは、LINEも可能性ありますよね…」

清水「高いっすね」


真田、天を仰ぐ


真田「(閃いたように)ボランティア団体の名前って覚えてます?」

清水「うわっ! えーっと…ジャパン…」


真田、スマホにジャパンと入力する


清水「ジャパン…あ、違うな、ジェダイカウンシル…」


真田、ジャパンを消して、ジェダイカウンシルと入力する


清水「いや、やっぱりジャパンが先か」


真田、ジェダイカウンシルを消して、ジャパンと入力する


清水「ん? ジェダイが先か。え? ジェダイとジャパンどっちが先だ?」


真田「ちょっと! いい加減にしてくださいよ! 何回書いたり消したりさせるんですか!?」

清水「おぉう。すいません。ジャとジェがややこしくて。ジェダイカウンシル・イン・ジャパン。これであってるはずです」

真田「ほんとですね?」

清水「間違えないはず…」


真田、スマホでジェダイカウンシル・イン・ジャパンと検索する


真田「これか。ホントにこれか? デモ集会してるとか書いてますけど」


清水、真田の持つスマホの画面をのぞき込む

画面にはジェダイカウンシル・イン・ジャパンのメンバーがデモ集会をしている姿を捉えた動画が流れている


清水「この一番はじっこの人、小島さんっぽくないですか?」

真田「ホントだ! これ絶対小島さんですよ! 14時の投稿。今は…」

清水「14時10分! 10分前!ていうかこれ渋谷っぽくないですか? 行けそうじゃないですか?」

真田「行きましょう!」

清水「えぇ!」


真田と清水、渋谷に向かい走っていく

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