第7話

16場

〇真田の自宅兼仕事場

SE:家のチャイム


宮田「すいません、急にお邪魔して~」

真田、宮田の順で入ってくる。宮田の手には多数の荷物が


真田「僕は構いませんけど、急な要件だったら別に電話でもよかったですよ」

宮田「いやいやこれは先生に直接伝えなきゃと思ったのでね。さ、先生。おかけになって」


宮田、椅子を手で示して真田に座るように促す

言われるがままに着席する真田

がさがさと荷物を漁る宮田


宮田「さて、本日先生にお伝えしなければならない、緊急かつ重大なこととは…デケデケデケデケ…デン! 先生の本に、映画化のオファーが来ました!」


宮田、隠していたクラッカーを鳴らす


宮田「おめでとうございます!」


宮田、真田にパーティ用の三角帽子やら「本日の主役」とか書いてあるタスキを着せながら話を続けていく


宮田「とはいえ、若手監督の自主映画の企画ですけどね。しかし! 安心してください! この若手監督というのが、数々の海外の映画祭で賞を獲得している、今、最も注目されている若手の1人なのです! こちらが受賞した賞の一覧です」


1枚の紙を渡す

真田、紙を受け取りしばし眺める


真田「確かに取ってる数はすごいけど、聞いたこと無いのばっかりなんですけど」


宮田、ケーキの箱をテーブルに乗せる


宮田「それでも認められてるってことは確かですから」

真田「どうせ映画にしてもらうなら、もっと有名な人の方が…」

宮田「ご自身の大切な作品ですからね、その気持ちもわかります。けど、別にいいじゃないですか、やっちゃえば。『一回しか映画化かすることができない』なんて決まりがあるわけじゃないんですし、映画化をきっかけに先生がもっと有名になったら、誰か有名な監督の目に余るかもしれませんよ」

真田「…目に留まるじゃないかな? 余るだと、扱いづらい人みたいになっちゃうから」

宮田「惜しかったなー余るじゃなくて留まるだったか~」

真田「前から時々不思議に思ってたけど、よく出版社に就職できたね」

宮田「裏口なんで」

真田「え?」

宮田「コネ入社ってやつです。おじさんに入れてもらって」

真田「おじさん?」

宮田「あれ? 編集長言ってませんでした?」

真田「編集長がおじさん!?」

宮田「そうですよ。なんだてっきり伝わってるものだと思っていました」

真田「いやいや初めて聞いたよ。それにしてもなんでまた?」

宮田「出版業界なんて斜陽も斜陽。いつ会社が潰れてもおかしくないですから」

真田「あんまり編集から聞きたくない言葉だな」

宮田「そんな会社が、希望をもって出版業界に入ってくる前途ある若者や、家庭を守るために一生懸命働く人たちなどを預かってしまっていいのだろうか…? しかし、人手は欲しい…そこで! 仕事を辞め、地元でフラフラとしていた私に、白羽の矢が立ったわけです」

真田「それでいいのか、編集長」

宮田「あ、でも先生の本が好きなのは本当ですからね」

真田「そうは言っても会社の入るまで、自分の本なんて読んだことなかったでしょう?」

宮田「そんなことありませんよ! 就職祝いにおじさんが、たくさん小説をくれたんです。『社会人にもなるんだから、本の一つや二つも読みなさい』って。まぁもらってからもすぐには読まなかったんですけど。結局会社は辞めちゃって、それで実家でゴロゴロしてるときに、本のことを思い出して、やることもないし読み始めたんです。その中に先生の本もありました」

真田「へぇ」

宮田「先生の本を読んでるときに、なんていうか世界が開けるっていうか、視界の解像度が上がるっていうか、そんな感覚があって。そんなことって初めてだったんです。そんな時におじさんから、編集部で働かないかって言われて、先生の担当につかせてくれるならって言って、働き始めたんです」

真田「おじさん、身内に甘すぎない…?」

宮田「そんなもんですよ」

真田「そうかなぁ?」

宮田「それで、映画化の方どうします?」

真田「うーん。少し考える時間をもらってもいいですか?」

宮田「もちろんです! あ、そうだ。監督の作品借りれたんで、参考に見てみてください」


宮田、DVDを真田に渡し、三角帽子やタスキを回収する


宮田「(回収し終えてから)さて。じゃあ、ケーキ食べましょうか」

真田「え、良いんですか? 映画化決定のお祝いで持ってきてくれたんじゃないんですか?」

宮田「そのつもりでしたけど、別にケーキはいつ食べたっていいじゃないですか。あ! チョコのプレートは私がもらいますからね!」

真田「どうぞどうぞ」


17場


平井、以下の内容をSNSに投稿する

「mRNAワクチン(メッセンジャーRNA)接種による『玉手箱症候群』そういえば、60代の老衰死が増えています。2023年は9月までの発表で255人。2022年を超えるでしょう」


すると突然カーボナイト凍結される平井

次いで、以下を投稿する


「アカウントが凍結されました! これはサブアカウントで投稿しています! 間違えなくダークサイドからの攻撃です! ダークサイドに対抗するために拡散してください!」


平井の投稿を見た人々が続けて以下の内容を投稿していく

「言論の自由が否定されている!」「ついに言論統制が一般人にまで」「帝国へ向かっている」「民主主義を守るためにも立ち上がりましょう! 戦いましょう!」


続けて加藤、以下の内容をSNS投稿する

「まもなく我が国の民主主義は死ぬでしょう。ただし、万雷の拍手の中ではなく、闇のなかでひっそりと」

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