第6話

12場


人を待っている様子の宮田

清水と真田の二人、別々のところから宮田に声をかける


清水・真田「ごめんおまたせ!」

宮田 「ううん、こちらこそごめんね。急に呼んじゃって。どうしても今日中に渡したい物があって…ほら、今日、バレンタインじゃん?」

清水・真田「え? あー今日バレンタインかー全然気が付かなかったわー」

宮田「だから…これ…」


綺麗にラッピングされたチョコレートを渡す

清水と真田、チョコレートと宮田を何度も見比べる


宮田 「いつも色々教えてくれたり、話も聞いてくれてるからお礼に」

清水・真田「え。あ、お礼ね! そうだよね! わざわざいいのに!」

宮田「これは二人だけの内緒ね。今年は誰にも渡してないから」

清水・真田「誰にも!? うん、わかった!」


宮田、SNSの裏アカウントに投稿する


宮田 「二人とも全く同じリアクションしてたな。キモ」



13場

佐々木「こちら新たに私のパダワンになりました小島さんです。こちらジェダイナイトの加藤さんとそのパダワンの平井さんです。加藤さんは優秀な方で、いま一番マスターに近いナイトと言っても過言ではないと思います」

加藤 「いやいや、そんなことはないですよ…」

佐々木「小島さんも加藤さんの姿を見習って、まずはナイトを目指して頑張って下さい!」

小島 「はい! 見習わさせていただきます! よろしくお願いします!」

加藤 「いやいや、私なんてほんとそんな大したことしてませんから」

佐々木「またまた~」

加藤 「いやいやほんとに!」


遠くから多留が声をかける


多留 「佐々木さん、ちょっといいかな」

佐々木「はい! 今行きますー」


といって多留の下へ向かう佐々木


加藤「(小島に向かって)聞いてますよ、期待の新人だって。この間の募金活動でも活躍していたらしいじゃないですか」

小島「自分はなにも。ただ声を出していただけで」

加藤「でも、期待されているのは本当だと思いますよ。師匠の佐々木さん。すごい人なんですよ? マスターの中でも限られた人しかなれない評議員。まぁ俗にいうところの幹部ですね。そんな方なんですから」

小島「そ、そうだったんですか」

加藤「ですから、小島さんは間違えなく期待の新人なわけです。私のパダワンも刺激を受けて頑張ってもらえたらいいんだけどね」

平井「精進します。マスター」


しばし間


小島「あの! お二人はライトセーバーの型はどれが最強だと思いますか?」

加藤「型?」

小島「えーっと、戦闘スタイルと言いますか…マカシとか、ヴァーパッドっていう名前があったりする…」


言葉の出てこない加藤と平井


照明が落ちて、スポットライトが当たる

その光の中に多留が入ってきてスピーチを始める


多留「まずは我々の同志、マスター・佐々木とそのパダワン、平井が無事にダークサイドの元から帰ってきました。彼らの勇気を皆で称えましょう!

ウクライナやイスラエル、世界各地で戦争が起こっています。これはスターウォーズでいうクローン戦争で、世界はエピソード2が終わり、エピソード3に入ったということです。この戦争を裏で操っているのはアメリカ政府で、まもなくアメリカは帝国へと変貌し、世界中すべての統治を狙うことでしょう。そして同盟国である日本は、一番に帝国の傘下になることでしょう。銀河帝国における恐怖の象徴、ダースベイダーのヘルメットのモチーフに、ナチスドイツの意匠が用いられているのは周知の事実。つまりアメリカの帝国化というのは、ナチスドイツの再来を意味しているということです。ナチスドイツの悪逆非道な行為を知らない人はいないはず。その危機が日本にも迫っているということです。我々の手で日本を、世界を救いましょう! 皆の手で救うのです! 簡単です。無知な人々に、我々がこの世の真実を教えてあげればいいのです。そうすれば皆、この世の中がおかしいということに気が付き、立ち上がるでしょう。もう一度言います。我々の手でこの国を救うのです! ともに戦いましょう! 皆がフォースと共にあらんことを!」


14場

清水「久しぶり。どうしたんですか急に」


と言って手を挙げる。ハンドシェイクを求めている様子

小島、清水の掲げた手を見るが無視して


小島「まずはこの間はすいません。ちょっと言い過ぎたなと反省してます…」

清水「まぁまぁそんなこともあるって。あんまり気にしなくていいですよ。真田さんには会ったりしたんですか?」

小島「いや、それはまだ…」

清水「連絡してみましょうか?」

小島「それはまぁおいおいで」

清水「あ、そうだ! 新しいボードゲーム手に入れたから今度先生とやるんですよ! 小島さんも一緒に!」

小島「えぇ、まぁ…その…今日はちょっとお願いがありまして」

清水「お願い?」

小島「はい、実は…」

清水「ちょっとまって! 当てるから! フォース使って! 小島さんからお願いなんて珍しいからなーよっぽどのことなんでしょうけど…あ、わかった! 結婚だ!」

小島「あ、ちが…」

清水「結婚するから証人のところにサインして欲しいんでしょう。ほかに書いてくれそうな人いないですもんね!」

小島「そうじゃなくて! (小瓶を取り出しながら)このサプリを買って欲しいんです!」

清水「…えっ? えーっと…お金、困ってるんですか? そういうことならこんなマルチみたいなことしなくても…」

小島「マルチ商法じゃなくて」

清水「ネットワークビジネスをやってる人はみんなそういうんです。そんな犯罪まがいなことしなくても、少しくらいならお金貸しますよ? …それかもっと大金が必要なら、小島さんのコレクション、僕が買い取ります。お金に余裕が出来たら買い戻してもらっていいですから」

小島「お金に困っているわけじゃないんです」

清水「じゃあなんで」

小島「最近ボランティア団体に入って、募金活動したりしてるんです。このサプリも売り上げが孤児の支援だったり、紛争地帯の支援に使われたりしてて… それにこのサプリには、ロサンゼルス大学の教授が発見し、名付けた『ミディ=クロリアン』という成分が入っています。その成分は疲労回復に効くという研究成果が出てて、これはイギリスやフランスなど多くの国々の大学教授も認めてるんです。あ、ある成分に『ミディ=クロリアン』と名付けただけで、これを飲んだところでフォースを使えるようになるわけじゃありませんから」

清水「それ怪しくないですか?」

小島「自分も初めは怪しいと思ったんです。けど、ネットで色々調べてみたら、ちゃんとこういうふうに…(英字の論文を見せる)論文も出てて、認められてるんです。それに大事なのは、この売り上げによって救われる人がいるということです。これを買うことで善良な市民をダークサイドの魔の手から救うことが出来るんです。これは良い行いなんですよ」

清水「…いやぁ」

小島「…今、団体の人からすごい期待してもらってて。その期待に応えるためにも頑張らなきゃいけないんです。ここで成果を出さなきゃいけないんですよ! だから…」

清水「わかりました。一回よーく考えてみてください。それでもまだ買って欲しいと思ったら、改めて連絡をしてきて下さい。その時は小島さんを信じて買いますから。それじゃあ」


と言ってその場を立ち去る清水

悩んだ様子の小島



15場


多留 「なるほど。この話どう思う? パダワンよ」

平井 「はいマスター。そのご友人はダークサイドに堕ちてしまったものと考えた方がよいでしょう」

多留 「うむ。よく弟子をしつけているようだな、マスターよ」

加藤 「ありがとうございます」

多留 「私もこのパダワンと同じ意見だ。ただひとつ違うことがあるとすれば、その人間はもう、そなたの友人ではないということだ」

小島 「そんなことは…」

多留 「そなたはその人間に犯罪者呼ばわりされたのであろう。真の友人であれば、友人のことを犯罪者呼ばわりしない。のう、パダワンよ」

平井 「はい、そう思います。マスター」

多留 「そなたの真の友人は我々だけだ。我々はそなたのことを決して犯罪者呼ばわりすることはない。そのものと関わりを持つのは辞めたまえ」

小島 「いえ、ですが…」

多留 「それが出来ないのであれば、ジェダイオーダーから立ち去ってもらうことになる。ダークサイドとつながりのあるものは置いては置けんからな」

小島 「…」

多留 「その人間は、そなたのことを犯罪者だと言ったのだ。今後そなたはそのような目で見られ続け、見下され続けるんだぞ。そのようなものと、今後も仲良くしていきたいと思うか?」

小島 「…」

佐々木「関係を断つだけでよいのです。連絡手段はLINEですか?」


小島、軽くうなずく


佐々木「さぁスマホを出して」


小島、スマートフォンを取り出す


多留 「いいぞパダワン。ブロックするのだ」


小島、スマホを操作し、あとはブロックをタップするだけの状態に

清水が現れる(イメージ)。首元にライトセーバーが当てられ、今にも切り落とされそう

命乞いをするように多留を見つめる


多留 「早くやれ」


清水、視線を小島に移す

逡巡する小島


小島 「出来ません」

多留 「やるのだ」


小島、意を決しブロックをタップする

その瞬間、ライトセーバーで首を切り落とされる清水

後悔をにじませる小島


多留 「それでよい、パダワン。繋がりを持っていては危険な男であった」


多留 「皆の者! このパダワンは、ついにダークサイドのものとの関わりを断つことに成功した! ジェダイナイトとして、大いなる一歩を踏み出したのである。こういう時、人は困難が付きものであるが、見捨てることなどせず、仲間として皆で支え、ともに手を携えていこうではないか! パダワン小島よ、おめでとう! よくやった!」


一同大いに盛り上がり、小島に多数の賛辞の言葉を投げかける


加速度的に団体の活動にのめりこんでいく小島

メンバーと共に積極的に活動に参加する

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