第8話 変わりゆく何か…②

 伝えたい事とはなんだろうか。とても気になるけどその答えは今週末までお預けだ。

 休み明けの仕事にはかなりモチベーションに影響しそうだ。

「はぁー、切り替えは上手な方だと思ったのだけどなぁ」

 日々溜まっていくデータを整理しながら溜め息が出る。


「おや?月曜からお疲れかい?寝不足?」と課長の百瀬(モモセ)さんが訪ねてくる。

 百瀬さんはいつも元気な女性だ、歳はたしか二十六歳だったかな、色々教えてくれた先輩だ。

「あー、いえ…なんとも言い難い体調不良ですかねー」

 良い返が思い浮かばなかったから適当に言い返した。

「若いからって油断したらダメよ、よく寝てよく食べる!」

 まあ、そう言うだろうなとは思った。


私は「はーい」と返事してパソコンに顔を向け仕事を続けた。


お昼休みは1人で食べ少し仮眠した。少しはスッキリしたけど雨湯児さんには会えずじまいに。

「ま、メールなり電話でもいいか」

 私はそう思い午後の仕事に邁進していこう。


 午後はあっという間に過ぎ駐車場へ向かう。その時見覚えのある後ろ姿を発見した。

「雨湯児さんお疲れ様」私から声を掛けた。


「あ!夜月先輩お疲れ様です、昨日はありがとうございました!」

 今日初めて会う彼女は何処か可愛かった。

「雨湯児さん、土曜日って空いてるかな?」私はそう切り出した。

「はい、ぼっちですので空いてますが?」とどう答えたらいいか分からない返答を受けた。

「えぇっと、土曜日にファスの実家に行くんだけど一緒にどうかなって、向こうは来てもいいよって言ってくれたよ、どうかな?」とぼっちには突っ込まず要件だけ伝えた。

 雨湯児さんは少し考えた様子を見せた後に「行きます」と静かに答えた。

「うん、分かった、伝えておくね、現地集合にする?待ち合わせにする?」

 私は必要な事を決めようと提案したが…

「実は先輩…私…」と何やらいいたげに見てきた。

「な、何かな?」と身構える。

「私…原付バイクなんです」と言われた。


 原付バイク…待て待て、じゃあ先日のショッピングモールも一時間半掛かって私より早く来ていたのか…

「ええ!じゃあ…一昨日は大変だったね…」

私は少し戸惑った声が出た。

「なので地元に帰るとしたら汽車かバスですね」と何食わぬ顔で言ってきた。

 分かりました、連れて行きます、はい、連れて行きますよ。


「一緒に行こうか…」と提案した。

「え!ありがとうございます!行きます!」と元気に話しが決まった。

 「それじゃ、行くまでには住所教えてね、迎えに行くから」

 そう言うと雨湯児さんは「はい!」と元気な返事をしてメッセージに住所を送ってきた。行く気満満だ。

「それじゃ気を付けて帰ってね」と私は片手を上げ自分の車に向かった。

「先輩も気を付けてー」と雨湯児さんも駐輪場に向かって行った。


 土曜日まで長いなーと思いながら車を走らせ買い物へ。


 自宅に戻りファスの写真を手にもち口を付ける。ファスのお母さんは何を伝えたいのだろか、すごく気になる。


「ほんともう、会えないんだよね」

 誰もいないこの部屋がホントに淋しく暗い。

 明かりも気配もない部屋は迷宮の入り口かと錯覚するぐらい暗い。

 明かりをつけいつもの私の居る部屋にする。一人でご飯を食べる。一人でお風呂に入る。

 寂しい。人と話した後の静寂はホントに慣れない。


「昔は一人でいるのは平気だったのになぁ……ねぇ…帰って…来ないかな…」

 あぁ、涙が出てくる。夢にも出てくる。けど目の前には出てきてくれない。

「ホント、一人って大変だよ」

 私はタブレットで動画サイトを開き癒し系音楽の動画を流して布団を被った。


「おやすみ」

 返事が来るはずもなく音楽だけが聞こえてくる夜に意識は遠のいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る