第6話 ………気付かない侵食……③
手を引かれ紅茶専門店にやって来た私は楽しい気分でいっぱいだった。
中学時代から紅茶にハマりもう10年前後になる、この時期と言えばダージリンのセカンドフラッシュは外せまい!
「先輩は紅茶が好きなんですか?」
雨湯児さんがそう聞いてきたので私は答えた。
「うん、大好きだよ、フレーバーティーもダーリンもアッサム、セイロン、アールグレイも好きだよ」
少し早口になってしまってがまぁ気にしない、今目の前に宝石のように輝いて見える茶葉たちを見てはもう止まらない。
「あははは、先輩ホントお茶好きなんですね、私も何か選ぼうっと…オススメはありますか?先輩」
おすすめを尋ねてくるなんて可愛いじゃないか。
「そうだねー、この時期ならダーリンのセカンドフラッシュがおすすめかなー、甘めの香りが好きならこのカシスとブルーベリーの合わさった茶葉も捨てがたいね」
私はそう言うと試供品の茶葉の缶を開けて彼女に近づき香りを試してもらう。
「あ!この香りはいいですね!お持ち帰りです!」
どうやら好みに合ったようだ、それならこれもあれもと色々試してもらおう
「甘いお菓子やケーキと一緒ならこの紅茶はおすすめ、私は買う予定なりよ」
一通り説明して試してもらう、試供品の缶を開けて彼女の顔まで持っていく。
「これもいいですね、こんなにいっぱいあるなんて思わなかったで……す!!」
雨湯児さんの反応がなんか変だった。
「何かあった?」っと当然の疑問をぶつける。
「いえ………、目の前に先輩の胸が迫ってきてどうしていいか分からなくなっただけです、すみません」
え?この子は女の胸に興味ある人なのか?まぁ胸好きな女の子もいるからおかしくはないか……
「なにそれー、ちょっと可愛いんだけど」
私は笑って流した、それがいいに決まってる。
「だって先輩の大きいし服装だってそんなんなんですもん!」
少し不貞腐れて抗議してきた。
「さ、買ってしまって次の輸入店にいきましょ」
私は次を促し会計を済ました。
「輸入店では何を買うんですか?」
質問が飛んでくる。
輸入店では海外のスープとかビーツ缶とかが目当てだ。
「海外のスープや食品が目当てかなー、久しく料理してないし久しぶりにボルシチ食べたくなってきたからビーツを買いにかな」
素直に答える。
「ボルシチ作れるんですか!食べたいです」
目をキラキラさせ見てくる。
「切って煮込むだけだから調べてつくってみたら?」
少し意地悪してみる。
「食べさしてくださいよー、食べた事ないですしー」
ボルシチは月一回は作ってファスと食べてた、彼女のお気に入りの献立だった。少し思い出に浸りたい…だから作って食べたいだけだ。
「機会があれば作るわ」
私はそう軽く答えた。
「それ、作らないやつー」
軽く答えられた。
買い物を終えたらもう17時になるとこだった。
「私は買うものは終わったよ。雨湯児さんはどう?」
彼女に振る。
「私も満足しました!先輩の事も少し分かった気もしなくもないですし」
楽しそうに答えた。
「そっか、私も久しぶりに楽しかった。ありがとう」
私も答える。
「あ、先輩の髪って青色が入ってるんですね、今気づきました」
そう言い指さしてきた。
私の髪は黒と青を混ぜたようなほぼ黒な青にしている。
理由はファスが赤色に染めてたから私は青色にって言う単純な理由だ。
「うん、そうだよ。ほぼ黒だけど青色にしてる、これくらいなら職場でも何も言われないかなって思ってね」
実際何も言われてないので問題ないだろう。
「へー、凄いいいですね、私もしてみようかなー」
お揃いにするのも好きにしたらいいと私は思う、誰も止める権利はないからね。
「先輩は青の理由ってあるんですか?」
雨湯児さんは尋ねてきた。
「うん、ファスが赤色だったから私は青色にしてただけだよ、染めるなら何か繋がりが欲しかっただけかもしれない」
私は自嘲気味に答えたが、雨湯児さんはキョトンとしてる。何かおかしかっただろうか。
「どうしたの雨湯児さん?」
そう聞くと。
「あ、いや、ファスって誰ですか?」
不思議そうに聞いてきた。私は少し安心したのかもしれない。ファスのミドルネームを彼女に教えてない事に…
「あー、えっと、デリスのフルネームはね『デリス・ファスファイト・風炎』だよ。ファスファイトは長いからファスって呼んでたの」
私は彼女の名前を伝えた。
「知らなかったです、先生もデリス・風炎で呼んでたので…そうなんだ…ちょっと残念だな」
雨湯児さんは少し残念そうだった。
「彼女なりにこだわりがあったみたいね…あの子変わってたからね」
どうフォローしたらいいか分からないけど……
「あ、いえいえ、また先輩の事がしれて良かったです!今日は色々ありがとうございます!」
雨湯児さんは頭を下げてきた。
「ううん、私も楽しかった。また頑張れそうよ」
そう答えるしかない気がした。
「今度は先輩のおすすめのお店でご飯食べに行きましょうね!それじゃまた月曜日に会いましょう」
彼女は笑顔で手を振ってきた。
「ええ、オススメあるからまた行こうね!」
私達は同じタイミングでそれぞれの駐車場に別れて行った。
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