第2話 傷心の埋め方
私は今、会社のソファーに腰掛けて深呼吸を続けている。
廊下でぶつかったあの子、雨湯児飛燕は私と同じ高校…そしてファスファイトと私を知っていた、彼女の口からデリスと聞いてからふわふわして視界が歪んで気づいたらソファーに座ってた。
「まだ、整理できてないのかな…そうだよね、まだできるわけないじゃん…あの子はなんで大切な人がファスだと分かったのかな…」
高校ではファスとは露骨な触れ合いは避けて休日や家で関わっていた、少しは…学校でも触れ合ってたけど人目には注意してたから…
悩んでも仕方ない少し休んで仕事もどらないとね。
そう思ってたら雨湯児さんがコップを持ってやって来た。
「先輩、大丈夫ですか?お水です」
私はごめんね、ありがとうと言い受け取った。
水を見たら喉が渇いてるのに気付かされ飲み干してしまった…
「すみません、私…高校の部活が陸上部でデリス先輩と一緒だったんです、それで就職した後に実はお二人を見かけたことがあって……」
バツが悪そうに雨湯児さんは言ってきた、それならファスの事が出ても…おかしくは……ないよね?
…………本当に?…大切な人と言うだけで親でもなく恋人と聞かずファスの名前が出るのだろうか………考えすぎだ、気持ちが参ってるからそんな思考になるんだ。
自分にそう言い聞かせた。
「そうだったんだ、あの子すごかったでしょ、男女ともに人気になるの分かるわ」
私はなんとか答えた、雨湯児さんがそれに続いて。
「ホントかっこよかったですし人気でしたよ……先輩はホントにかっこよくて…ホントに死んでしまったのですか………」
雨湯児さんも凄く悲しそうに聞いてきた。
「うん…」
私は弱く頷いた。
「先輩、あの…良ければ…」
雨湯児さんが何か言いそうになったとき私の部署から声が聞こえた。
「部長の腹がそんなに出てるから娘さんに嫌われるんでしょうがー」
誰かが部長に嫌味を言ってる。
「身体的特徴を貶すとはけしからんぞ!腹が立つぞ!」
部長が吠える。
「いやいや、不摂生の特徴じゃないですかー?腹が立つじゃなく腹で立てるんじゃないですか」
誰かが答える。
「誹謗中傷だー!」
またまた部長が吠える。
「中性脂肪の間違いじゃないですかー?」
「中性脂肪で部長死亡!いえい」
…………部長頑張れ。
「先輩の部署、えーっと、うるさあー、に、賑やかなんですね!」
だいぶ言葉を選んでたけどいくらか口に出てますよ雨湯児さん。
「ここの部署楽しいよ、皆んな優しくて面白いよ」
この人達は楽しいから仕事も楽しい。
「それで何か聞きたかったの?何か言いかけたけど」
話をそらしたままでも良かったけど問題は早めに確認しとくべきだ。
「あ、その…先輩が良ければお食事とかお出かけとかご一緒できたらなって…その…今の先輩放っておけないと言いますか…その…そんなかんじです!」
目を逸らしながらも最後にはしっかり目を見て言ってくれた。
家に居ても正直まだ辛い部分もあるのは確かだし断るのも後で何か噂になっても困る
ここは受けるべきか……
「ありがとう、今日は休ませてもらうけど明日なら大丈夫」
先ずは立ち直らなきゃ……
心配してくれる人もいるのも事実だし
「分かりました!ホントに無理はしないでくださいね」
明るくそう言ってくれた。
連絡先を交換してまた明日と別れそれぞれの部署に戻った。
「はー、大丈夫かな」
私は自分に言い聞かせ仕事に取り掛かる。
私の不安は消えない。
確かに1人でいるのは不安になる。
けど雨湯児さんは…
「ファスの事知りたくてどうしょうもないんだろうね」
少しは話してもいいんだろうけど、私だけの宝物でもあり割り切れてない分足枷にもなってしまう。
「どうしようかな……ファス…」
思い出の詰まった家は今や毒と薬の両方になってしまってる。
今度ファスの実家に行って線香あげに行こう。
そう思いながら帰路についた。
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