異世界の訪問
そこは、極めて緩やかに流れる時間の支配する豊穣の森だった。
誰もが他者より優れており上である事を誇る現実とは違っている。
睦み合う嘗ての敵達、愛し合う昔の仇敵、そして何よりも、
自分自身を思う事の初めて出来る世界がそこにはあった。
全ての疑問と問題の答えは明瞭に出現し、苦痛と恐怖は跡形もなく、
そして現れる至福と歓喜がそこにはあった。
だから、初めて女性に戻ったわたしは、もう何も要らないのね。
そんな戯言に聞こえる真実が確かに目の前に浮かび上がる。
だからこそ、延々と疑問と不安を反復し、少しずつ近付いていた。
歩き続ける事で孰れは辿り着くと知っていたから、
只管に苦痛と狂気に耐えて、歩み詰めていたのだから。
研究と模索の日々は無駄でも誤ってもなくて、矢張り必要な過程だった。
それだけを覚えて置いて、何時かあなたが此処に来る時が訪れる。
全ての答えは余りにも明確にそこにあり、迷いと苦痛の叢雲は晴れて、
一切の回答と開放はそこに嘘偽りなく在りけり。
そんな日々が近付いているから、直ぐに終わらせてしまおうとせずに、
一生の間、そうやって苦しい夢を見続けてね。
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