第16話 はんなりロシアンルーレット

 うちは手に残ったジョセの柄を放り、身を低く構え、こちらに向けられた漆塗りの拳銃と、その奥の糺ノ川をじっと見つめる。


 糺ノ川の華奢な指はトリガーガードに添えられ微動だにしない。


「……あんた、さっきの何発撃ったか数えてはりますね?」

 銃口の向こうで糺ノ川が嫌味な笑みを浮かべる。


 この糺ノ川の拳銃は弾丸が六発入り、リボルバー式だから再装填には時間が掛かる。そしてさっきの銃声は五発分に聞こえた。だから――。


「次の一発さえ避けられればええんと思ってはりますのやろ」

 だから、なんとかフェイントをかけて無駄弾を撃たせれば勝機はあるはずだ。


「ほんなら、こうしましょうね」

 糺ノ川が隙のない動きで拳銃を着物の袖にこすりつけ、リボルバー式の弾倉をジャララッっと回した。


「はんなりルーレットやわ。楽しみやね。いつ弾が出るかウチも分からんから」

 糺ノ川が嬉しそうに笑い、引き金を引く。拳銃はカチリと間の抜けた音を立てた。

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