第13話 大阪南部のお嬢様
「うるおあーーーー!!」
金属バットを振りかざしたチンピラのこめかみに木刀〈ジョセフィーヌ〉を叩き込む。返す刀で背後の男の脛を打ち抜き、倒れ込んだ後頭部にジョセの柄の頭を振り下ろす。
「蓮歌! どこや!」
うちは叫びながら倉庫の扉をひとつずつ開けて回り、たまに出てくるチンピラを一人ずつ始末する。大阪南部出身のうちには他愛もない。
愛刀は南大阪人の嗜みとして実家から持ってきていたが、他一式は持ち合わせが無い。
仕方がなく高そうな靴のヒールを折り、お腹に巻く晒しはコルセットで代用している。改造お嬢さま装束は不格好なようで案外よく馴染んだ。
上京前、こっちのことを勉強しようと読んだ本を思い出し、東京流の煽り文句を叫ぶ。
「日和ってる奴いる? 日和ってる奴いる?」
返事の代わりに暗がりで何かがキラッと光った。反射的にジョセを構え、飛んで来た分銅鎖を絡め取る。
ドスを構えた男が突っ込んできたので、鎖の重さを乗せた小手打ちでドスを叩き落とし、鳩尾を突き込む。奥にいる逃げようとしていた男に、ジョセを大きく振り回し鎖を投げ返す。
「な、なんだんだよお前!」
「なんやとはなんや」
鎖に絡まり床でもがく男に歩み寄る。
「蓮歌の居場所、教ぇや」
「れ、蓮歌? お前、あのお嬢様の身内か!」
「はよ教え言うとるやろ!」
男の膝にジョセを叩き込み、叫び声が止むまで数分待つ。
「あ、あのガキはボスのところだ」
「ならそのボスの居場所教ええ」
「そ、それだけはできねえ!」
うちは無言でジョセを振り上げる。男がヒッと身体を縮こませる。
「それだけは勘弁してくれ、それだけは……。殺されちまう……」
うちはジョセを下ろし、プラプラ歩き始める。
「喋らんなら用は無いわ。……自分、家族は」
「は? お前の家族のことなんか」
「自分に家族はおんのか聞いとんのや!」
「お、俺? 弟が一人いるけどよ」
「なら弟さん気の毒やな」
「は? なんで」
うちは倉庫の隅で見つけた空き瓶を男の口に捩じりこむ。
「……もう二度と兄弟でお喋りできひんようになるんやからな」
ジョセを野球のバットのようにゆっくり大きく振りかぶる。男がくぐもった叫び声を上げた。
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