第10話 天蓋付きのベッドでおやすみ
夜。客間を断ったうちは蓮歌に連れられて彼女の部屋に帰る。
天蓋付きのベッドに二人で飛び込むと、疲労した身体が柔らかすぎるマットレスに深く沈んだ。
うちが普段使っている赤坂邸のベッドもそうだが、お嬢様のベッドは一人で使うのにはやっぱり大きすぎる。実家では家族で川の字になって寝ていたから、横に人が居るのはなんだかとても安心した。
「蓮歌の髪、綺麗」
シーツに広がった蓮歌の金糸のような髪束を指でなぞる。蓮歌がくすぐったそうな、気恥ずかしそうな吐息をついた。
「そういえば、蓮歌ってハーフだったりするん? 金髪やし」
「いいえ。金髪はお嬢様にままあることですわ」
「ふーん……」
もっとお喋りしていたいと思う脳に逆らって、だんだんと瞼が重くなる。意識が遠のいてゆく。
「あのね、れんが」
「はあい?」
「あのね、うちね、れんが……が……ね…………」
うちの記憶はそこまでだった。
その晩が、上京してから一番よく眠れた夜だった。
二日間の猛特訓が終わり、赤坂邸までの帰路も山手町家の馬車で送ってもらうことになった。一応「申し訳ないよ!」と言ってはみるが、蓮歌ともう少しだけでも一緒にいられるのは嬉しい。
御者はあの初めに出迎えてくれた小柄なおじいさんだ。この方が赤坂でいう酒寿さんのポジションなのだろう。
「じいったら、春瑠子さんのことをいたく気に入ってしまったらしいの」
蓮歌はそう言っておじいさんとカラカラ笑った。
赤坂邸に着くと蓮歌が名残惜しそうに眉をハの字にした。うちは未練を断つように力強く扉をあけ、馬車を飛び降りる、
「二日間本当にありがと。めっちゃ楽しかったわ。今度はうちに泊まりに来や」
蓮歌の顔がパッと明るくなる。うちもつられて笑顔になった。
「はい! また明日、学校で」
「送ってくれてありがとうね。それじゃ、また明日」
うちらはそんな会話とは裏腹に、馬車が見えなくなるまで手を振り合った。
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