第22話  魔女のデルタ

兄貴の口から魔女のデルタの名前が出た。

頭が混乱した。

「兄貴、なんだよ。魔女のデルタって。」

僕は魔女デルタを知っている。

しかしなぜか僕は嘘をついた。

「そうか。まだか。」兄貴は弁当をたべながら

「この山手では13才になると魔女デルタが子供に会いに来る。ただ会いに来るだけだ。

この場所はカイ、窓から見えるだろう。

あの山下公園近くに僕ら人間には見えない結界があるらしい。詳しく言うと

別の国?いや違うな。異世界らしい。」

「兄貴、何だそのぶっ飛んだ話。」

「カイ、学校で山手の都市伝説的な話は、ないのか?」

「そうだな、夜に外国人墓地にオバケがでるとか?

黒猫が人間に変身するとかの話はあるな。」

「カイお前、海ねこ好きだろう。」

「海ねこの話は聞いたことないか?」

「特にない。」

「そうか。カイ、お前はなぜ、海ねこが好きなんだ?その青の海ねこTシャツもだし。」

「特に理由はないよ。しいて言えば、

少し意地悪でずるがしこい、あの赤い目が好きなんだ。それに空を偉そうに飛んでるし。」

「へえーそうなんだ。」

「それで兄貴は中1の時、会ったのか?

魔女デルタに?」

「あー、会った。」兄貴は僕より4つ年上だ。高1。

「話してくれ。」

「13の夏休み。学校の部活の帰りに外人墓地の横を通ったんだ。

黒いマントの男が立っていた。

「わーあ変な男だー!」思わず叫んでしまった。

夕方の時間なのにすれ違う人も、車なくて

怖くて必死で自転車のペダルをこいだのを覚えてる。

その夜だった。窓にコツン。

誰かが小石をあてる。ベットを抜け出し窓を見ると黒いマントの魔女がいた。

肩に赤い目の海ねこを乗せて。こわいくらい、

にらんでこっちを見てる。

次の瞬間、魔女デルタが部屋に入って来た。

『私は男じゃないぞ。』

とっさに『ごめんなさい。』って言ったんだ。

『じゃあ、ついて来い。』と言ったんだ。

怖くて『いやだ。』って叫んだ。

その時だった。カイお前が『トイレ』って寝ぼけて、部屋に来たんだ。

『弟は強い。カイ!』と叫んでしまった。

魔女のデルタは『わかった。海ねこ。カイ。』と言って消えたんだ。

「なんだそれ。」

「でもさ、それ以来、特に変わったことなかったし。単なる夢か?と

正直、高1の今まで忘れてたよ。」

「忘れていたのか。ばか兄貴。いい加減だな。」

「だな。カイ、13のお前に、何もなくってよかった。」

僕は兄貴に言うタイミングを逃した。

僕は疲れている。とりあえず今日は休みたい。





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