第3話 山崎君の彼女
学校から帰ってきた。
リビングでコーヒーを飲んでいると妹のルカが帰ってきた。
小学4年生のこの妹は優しくて今まで一度も喧嘩をしたことがなかった。私が小学6年生のとき、風邪を引いた時に、ルカは小学1年生なのに近所の薬局で経口補水液と、スーパーカップのアイスを買ってきたことがある。この時はルカの行動力に驚いた。
「おかえり、ルカ。良いものあげようか」
ルカは口角を上げ、「な〜に?」と言った。
「じゃ〜んっ」
私は制服のスカートのポケットから、パインアメをひとつ取り出した。
「これあげる」
「なんだ、ただのパインアメじゃん」
ルカは眉尻を垂らし、口をへの字にゆがめた。
私はルカの顔がおもしろい顔だなと思った。
美人というカテゴリーに属さないルカに内心、優越感を感じた。
ルカは「ありがとう」と言い、二階の自室に向かった。
私はルカで遊んだ後、テーブルの上からスマホを手に取り、『山崎卓也』とネットで検索した。
この時間が私は好きだった。
山崎君のSNSを見たりする時間が愛おしく感じた。
すると『山崎君の鬼嫁』というブログを見つけた。
クリックすると山崎君の彼女らしき人が山崎君との日常を綴っていた。
コンビニで一緒にアイスを食べた、ゲーセンに行った、神社の前で話してたら神主さんにうるさいと怒られたなどが書かれていた。
どうやらまだキスなどの一線は越えていないと直感的に思った。
私はブログのコメント欄に書き込みをした。
『今すぐ別れないと殺すわよ』
そう書き込んだ。
しばらくしてから返信がきた。
『そんな度胸もないくせにそんなこと言わんとって。もうわかってるから、あんたの気持ちは。うちに嫉妬してるんやろ?』
私は頭を掻きむしった。イライラで爆発しそうになった。
こんなこと言われる筋合いはない。
『あなたを監視してる。山崎君に触れたら絶対に許さないから』
私は本気で山崎君の彼女を脅した。もちろん山崎君の彼女は会ったことも見たこともないが、監視しているとハッタリを効かせた。山崎君の彼女を精神的に追い詰めようと思った。そして『山崎君に触れたら絶対に許さないから』という言葉は、せめてもの、私の本心だった。
私は悔しくて泣きそうになりながら、スマホをテーブルの上に置いた。
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