第48話 私の好きな未確認生物 グロブスター 後編
前編ではグロブスターについて語った。謎の肉塊などが海岸に漂着するというインパクトのある現象なのだが、正体は既存の生物であるという話である。
しかしながら、グロブスターの画像を見ると、どう見ても既存の生物とは思えないようなものも存在する。細長い首のようなものを持つ死骸や、海なのに毛が生えたようなものだってある。昔の純真だった中学生の私は、これらを見て未知の巨大生物に胸を躍らせたものだ。よければ、このエッセイを読んでいる方も「グロブスター」で検索して、表示された画像を眺めていただきたい。それが、何の生き物であるか答えられるだろうか。大抵の人はわからないと思う(私もだが)。
だからといって、本当に未確認生物だということではない。なぜ正体がわからないかと言えば――世の中の多くの人は、魚やクジラ、イルカといった海洋生物についてほとんど知識がないからである。
普通の人は、魚を見る機会が少ない。せいぜい、食卓にのぼったものや水族館で眺めたぐらいだろう。あとは、図鑑やネットで画像を見た程度だろうか。そういった画像は、ほとんどがきれいな状態のもので、死んで浜辺に打ち上げられたようなものはない。
釣りが好きな人なら色々と詳しいかもしれないが、グロブスターの正体とされるような大型の魚に遭遇したことがある人はごく少数だと思う。
そんな状況だから、海辺に巨大な生物が打ち上げられていても正体がわからないのである。ましてや、漂着した死骸が腐敗していたり、身体の一部が欠損していたりすれば、得体の知れないものに見えてしまう。試しに「クジラ 漂着」「クジラ ストランディング」で検索してみれば、それらしい画像が見つかるだろう(ストランディングだけだと、某有名ゲームがヒットするかも)。
大型のサメが腐敗して下顎付近が脱落すると、まるで細長い首のように見えてしまったりする。また、クジラの死骸が漂流しているうちに筋繊維が露出し、まるで毛が生えているように見えたりということも起こるのだ。大型の生物だと身体の一部分だけが流れ着き、それが得体の知れない物体だと思われることもあるのだろう。
グロブスターと呼ばれているものの正体は、だいたいこのようなものである。
このように説明すると、グロブスターって結局は大したものでは無いと思われるかもしれない。だが、オカルト的な面は除くとして、実は興味深い存在なのである。なぜなら、既存の生物が既にすごいからである。
かつて地球で生きていたとされる恐竜ほどではないにしても、クジラは十分に巨大である。クジラで最も大きくなるのはシロナガスクジラだそうで、最大で30メートル近くになるそうだ。数字で見るとなかなか実感がわかないが、実際に目にすれば相当に驚異的だろう。
サメの仲間もかなり大きくなる。ジンベイザメで20メートル近くになるそうだし、ウバザメで10メートル程になるらしい。このウバザメは巨体ゆえか、色々な謎の死骸の正体とされている。かつて、日本の漁船が引き上げた謎の死骸が、ニューネッシーと呼ばれて話題になったことがあったそうだが、この正体がウバザメらしい。このニューネッシーに関する事件もなかなか面白いので、興味のある方は検索してみると良いだろう。
グロブスターの話題からは外れるが、リュウグウノツカイという生き物もいる。たびたび漂着してニュースになることもある深海魚だが、細長い身体で大きいものだと8メートルぐらいになる個体もいるそうだ。リュウグウノツカイが現れるのは地震の前触れという伝説もあるそうだが、それぐらいインパクトのある見た目をしている。
今までグロブスターの正体は既存の生物ということを書いてきたのだが、本当に未知の生物だったという可能性はゼロではない。何しろ海は広大であり、特に深海についてはわかっていないことも多いそうだ。なので、未知の巨大生物が居てもおかしくはない。
昔、日本で巨大な魚の死骸が見つかった事件があったそうだ。サメっぽい姿だが、地元の漁師にも正体がわからなかったらしい。専門家に調べてもらったところ、サメの一種であるメガマウスであることがわかった、という話である。
なんだ既存の生物か、と思われた方もいるかもしれないが、このメガマウスというのは希少な生物であり発見された例も少なかったらしい。未知の巨大生物ではないが、なかなかロマンのある話だと思う。
他にも、有名な例としては絶滅したと思われていたシーラカンスが発見されたという話がある。もしかしたら、本当に未知の生物の死骸が流れ着くこともあるかもしれない。
ここまでグロブスターについて長々と書いてしまった。知っている人にとっては大した内容ではないと思うが、ついつい語りたくなってしまうのである。
とはいえ、飲み会などで隣の席に座った人に語るのはやめておいた方が良いだろう(エッセイに書くのもやめておいた方がよかった気もするが)。
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