第37話 意外と危ないものを食べていた話 ツツジの蜜
私が小学生だったのは、昭和の時代であった。
今から考えてみると、良く言えばおおらか、悪く言えば適当な時代だったような気がする(私の周囲の話だが)。
通っていた小学生はわりと遠いところにあったので、集団で登下校していた。
登校時はこれから学校ということで大人しくしていたが、下校時は勉強が終わった開放感から寄り道をしたりして、だらだらと歩いていた覚えがある。とはいえ、田舎のことなのでお店や遊べる場所などは無い。せいぜい、友達同士でふざけあったり道端の草や花をとったりするぐらいだっただろうか。
誰かが言いだしたのか、学校の授業で習ったのか忘れたが、ある花の蜜は美味しいという話があった。アカツメグサやツツジの花をとって吸うと、ほのかに甘いというようなことである。私も試してみたのだが、わずかに甘みが感じられたように思う。
もちろん、ジュースやお菓子ほど美味しいわけではない。それでも、道端に生えている花から甘みが得られるということが面白かったのだろう。ツツジは、通学路に野生のものが生えていたので、取って蜜の味を確かめていた気がする。他にも、野イチゴを食べたこともあるし、イタドリの茎をかじったこともあった。
このように、その辺りに生えている野草をわりと気軽に口に入れていたのである。
時代は流れて令和の時代である。
ネットで面白い食べ物について調べていたところ、マッドハニーなる食品があることを知った(正式名称なのかはわからないが)。ハチミツの一種のようで、名前の通り酩酊作用や幻覚作用があるらしい。世界には珍しいものがあるんだなあ、と思って説明を見ていると、驚くべき記載があった。
なんと、このハチミツはツツジ類の蜜からできるそうなのである。もちろん、ツツジなら何でも良いわけではなくて、特定の種類や地域のものらしいが、小学生の頃にツツジの蜜を吸っていた自分としては驚いてしまった。さすがに、日本でその辺りに生えているツツジなら問題ないだろう、と調べてみたが意外なことがわかった。
私は今まで知らなかったのだが、ツツジ科の植物は毒があるものが多く、蜜も危険なのだそうである。グラヤノトキシンという麻痺毒の成分が含まれており、過去に何件か事故も起こっているようだ。あるサイトには、子供がツツジの蜜を吸って遊んでいたら危険なのでやめさせましょう、と書かれていた。
過去に、私が吸っていたツツジは毒のないものだったようだが、意外と危ないことをしていたものである。毒のない種類だったら大丈夫かというと、素人には花の見分け方などよくわからないだろうから、やめておいた方がよいだろう。これに限らず野生の食材を口にするときは、十分に注意した方がよさそうだ。
ちなみに、毒ではないがこんなケースもある。
ある春のことだが、ちょっとした空き地に大量につくしが生えていたことがあった。採取しても問題のないところだったので、少し採って食べることにしたのである。味は良かったのだが、後に知り合いの話を聞いて微妙な気分になった。
「つくしが大量に生えている空き地? ああ、あそこって、いろんな家のワンちゃんの散歩ルートになってるよ。ちょっと、休憩というか……マーキングしているみたいだから、誰もつくしを取らないんだけどね」
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