第2話 人肉を食べそうになったという人の話は、本当か?

 前回、人肉を食べそうになったという人の話を紹介したが、読者の皆さんは疑問に思わなかっただろうか。この話は本当なのか、と。実のところ、私自身が書きながら半信半疑になっていたのだ。Cさんが嘘をついたとは思わないが、話を面白くするために脚色していたのではないかと。

 最も疑問に思ったのは、たとえ自分の身体の一部であっても医者が切除した部位を患者に渡すのだろうか、ということである。

 あからさまな作り話を紹介するのは気が引けるので、少し調べてみることにした。


 ちなみに、調べてみるといってもネットでちょっと検索した程度である。いい加減で申し訳ないが、趣味でやっているエッセイということで許していただきたい(怒るような人は、こんなエッセイを読まないと思うが)。  



 まず、肉体から切除した部位は誰のものか、という話だが、これは本人に所有権があるらしい。自分の肉体の所有権は自分にある。考えてみれば当たり前のことだが、あらためて言われると変な感じである。だが、所有権があるからといって、医者に切除してもらった部位を制限なしにもらえるわけでもないらしい。衛生上の問題や、公序良俗に反しないか、という点をクリアする必要がある。


 まず衛生上の問題だが、これは感染症を広げるおそれのあるものや、腐敗しやすい部位などは駄目ということらしい。伝染性の病気にかかっていた場合や、血液や体液などがよろしくないというのは納得できる話だろう。なので内臓全般は難しいようだ。


 次に公序良俗というとわかりにくい気がするが、たとえ自分の物であっても人体の一部である。明らかに人体の一部とわかる物を持って、その辺を歩いたり公共交通機関を利用したりするのはどうか、ということらしい。犯罪を疑われたり、無用の混乱を引き起こすおそれがある。考えてみれば、自分の物であっても切断された手足などを持ってバスに乗ったら大変なことになるだろう。


 ただ、衛生上や公序良俗の問題をクリアすればもらえるのかというと、それはよくわからない。病院ごとに規則や取り決めがあるのかもしれないし、別の法律なり条例等で制限されている可能性もある。そもそも、衛生上の問題を広く解釈すれば、ほとんどの場合が駄目になってしまうだろう。



 さらにネットで検索してみると、医者側の話が出てきた。


 患者から切除した肉体の一部をもらいたい、という申し出があったという話である。理由としては、長年お世話になってきたのだからお墓を作って弔ってやりたいとか、自分が死んだときに一緒に棺に入れてやりたい、というものらしい。心情的に理解できるところなのだが、どの程度まで渡して良いものなのか判断に迷うというものだった。この話は、しかるべき部署に相談してみるということで終わっていたので、どうなったのかはわからない。


 この話をみるかぎり、切除した自分の肉体の一部をもらうというのは、おかしなことではないようだ。

 ちなみに、歯などは慣習的に渡しているらしい。私自身も、歯医者で抜歯したあとにもらった思い出がある。持って帰った歯はどうしたのだろう。もしかしたら、今でも家のどこかにあるかもしれない。



 さて、話がよくわからない方向に進んでしまったが、本題はCさんが切除した自分の肉片をもらってきたというのは本当か、ということである。私がざっと調べたところによると、本当だったとしてもおかしくない、というところだろうか。Cさんは病気ではなく怪我だったし、肉片と言っても大きなものではなかったはずである。しかも、昭和の事だから色々とおおらかだった可能性もある。

 専門家からすると間違っているところもあるのだろうが、私自身は納得することができたので満足である。

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