アンテナ
ヤマシタ アキヒロ
第1話
アンテナ
詩人の体は
アンテナにすぎない
音楽家の体も
アンテナにすぎない
画家の体も
アンテナにすぎない
彫刻家の体も
アンテナにすぎない
あるいは
科学者や哲学者
歴史家や宗教家
建築家や料理人など
およそ
モノを創り出す人間の体は
精巧で華奢な
アンテナである
ラジオのつまみを回すように
チャンネルをある周波数に合わせると
もともとそこにあった音が
たちまちスピーカーから聞こえてくる
空気中に凝り固まった水滴が
やがて
いつか雨や雪となって
地上に降りてくる
土の中に埋もれた土器が
何百年 何千年の時を経て
そっくりそのままの形で
ある日 掘り起こされる
作品はこね上げるのではなく
電波をキャッチする行為に似ている
アンテナは人それぞれだが
きっと大切なのはその感度である
もし心が濁っていれば
アンテナは鈍くなる
魂が研ぎ澄まされていれば
高い電波をキャッチする
創作者という
さまざまなアンテナを通じ
地上に姿を現した
森羅万象は
結晶した作品として
プリズムのように
その本質を
そこに輝かせる
ただし如何せん
人間の体は有限だ
病気もすれば
事故にもあう
願わくは
あなたの繊細で美しいアンテナが
俗塵の風雨にさらされ
思いがけなく
ポキッと折れませんことを
(了)
アンテナ ヤマシタ アキヒロ @09063499480
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