第7話 仁義なき戦い

 家族が気に入った子は、止まり木に止まっていました。人に見られても、視線を向けるだけで動じません。


 家族が気に入った子をお迎えし、梅と名付け、松と竹を放鳥してから箱を開けます。


 出てくるのを待っていると、歩いて出て箱の前で止まりました。物珍しそうに、部屋を見回します。



 梅が箱から出た途端、竹がカゴの上から飛び降り、梅に近づきキャルルルと激しく鳴き、威嚇いかくします。しかし梅も負けてはいません!


 口を開けて、首をウネウネさせて威嚇お返し。驚いた竹は慌ててカゴの上に止まり、体を細くし警戒します。


 生後三ヶ月の梅はカゴに飛び乗り、竹を威嚇いかくし、追い払います。その時、私は不思議な声を聞きました。


「グゥアゥグゥアゥグゥアゥ」と、聞いたこともない声が。


 どうやら梅の威嚇する鳴き声の様で。



(えぇ~!? コレ、文鳥の鳴き声なのぉ!?)



 濁った低い声で、カラスの幼鳥の鳴き声に似ているような、サギの鳴き声に似ているような。


 とても文鳥から出た声とは思えず、私と家族は顔を見合わせました。

 

 松の威嚇いかくも「コロコロコロ」と鈴を転がす様な声なんですが、三分の二の確率で、うちの文鳥の威嚇する声がおかしい!


 私は動画サイトで文鳥が威嚇している動画を片っ端から再生し、松と梅に似た声の持ち主を探しましたが、見つからず。


 やっぱり、松と梅が文鳥として規格外だ変わっていると理解したのでした。






 幼鳥に負けた竹は、心が折れたらしく、カゴの中にいても餌を食べる様子もなく、じっとしたままで。


 こりゃいかんとカゴから出し、竹はかわいい、いい子だとたたえ、てのひらで餌を食べさせ、ちやほやした結果、竹は一日で復活し、翌日には元気いっぱいで梅へ喧嘩を売りに行きましたよ。



 竹と梅の仁義なき戦いに巻き込まれた松は、梅が近づくと、ひらりとかわして距離を置くようになりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る