第10話

「……おい。」

「んー、なんだい?……あっ、揃った。」


俺は揃った役を場に広げる。


「えーっと、これがこうで、こうだから……。15,400点かな。ね、そうですよね?」


俺は対面の相手に問いかけるが反応はない。

しかし、卓が自動的に反応し俺の手元にチップを寄こしてくる。

これで連続23回目の俺のアガリだ。


「また結構溜まったなぁ。じゃあ、そこの君を丸々頂こうかな。こっちにおいで。」

「は、は、はい……。」


俺はチップを100,000点を場に支払いその場に提示されていた賭け品の奴隷を一人手に入れた。

俺は彼に付けられていた首輪を外すと後ろに立っていた兵士にお願いする。


「彼も外に出してあげて。」

「……いつまでこんな事をする気だ。」

「善良な市民を助けるのが君の役目でしょ。ほら、早く。」


兵士は舌打ちを返し外につながる扉の方に彼を連れて行った。

去り際に元奴隷の彼は俺にずっと礼を言い続けていた。


今、俺と領主直属の兵士は闇窟の中層フロアの賭博場に来ている。

そこに入室して早々に俺は適当なギャンブルに参加した。

この場においてはフロントで賭け品を購入してから賭け事に興じる事になる。


例えば今俺が興じている奴隷取りゲーム。

プレイヤーはディーラーを仲介して決められたレートに沿ってその賭け品を使って賭ける事になる。

例えば1,000点で爪を剥ぐ、3,000点で指を切り落とす、5,000点で鼓膜を破る、10,000点で目玉を引きちぎるなどだ。

そして最終的に奴隷が動かなくなったら負け。

より少ない点数の使用で奴隷を殺せたら手に入るお金が多くなるとの事だ。

ただの金の負けた勝ったではスリルを感じなくなった欲の亡者達には負けても勝っても奴隷の反応で楽しめると好評の人気のギャンブルみたいだ。


俺はそういった趣味はないので奴隷の所有権自体を購入して、手に入れる度に解放して外に出していた。

所有権の獲得は事実上、唯一のこのゲームにおいて賭け品を傷つけないで勝利する方法である。

そして解放したのは今の彼で9人目だ。


「ち、畜生……。おい、奴隷だ!奴隷を買ってこい!」

「し、しかしお坊ちゃま、もう今日はお金を使い過ぎています……。」

「ならお前が賭け品になるか!?さっさと買ってこい!」


既に俺が座ってから数名プレーヤーが変わっているが対面に座っている彼は長い間粘り居座り続けている。

そして賭け品の奴隷が俺によってまた解放されてしまったので執事っぽいお爺さんを蹴り飛ばして追加の購入に走らせていた。

完全に賭け事に熱くなりすぎて負けを重ねていく悪循環に陥っているな。


「あらら、大丈夫なの?このギャンブルのレートもそうだけど奴隷自体も安くないんでしょ?これで5人目じゃないか。」

「黙れ、クズが…!貴様が足を落とし目玉を串刺しにされ絶叫する姿を皆が楽しみにしている。シャラ家の者として期待には応えなければならない…!」

「カスのノブレス・オブリージュだなぁ。」


 俺には奴隷を購入する金はなかったので自分の身体を賭けると提案してみるとこれが意外にウケて受け入れられた。

 観客も多く集まり俺の身体が欠損していく姿を楽しみに見ていたが結局、彼らが期待する様な事は起きず、ただ下層フロアのギャンブルと同じように奴隷の移動だけが行われ続けている。

しかも、その奴隷は俺が手に入れる度にすぐに解放されてしまう。

 彼らにはさぞつまらない事だろう。

先ほどから野次が止まらない。


 何度も俺のイカサマを疑う声があがったがこのギャンブルには特殊な魔道具が使われており不正が介入する余地はないらしい。

ただ、勝敗にはがあるというだけだ。


俺は紙袋から瓶に入った黄金虫を混ぜたジュースを飲む。

そして、また最初の手札が自動的に配られる。


「あっ、もう揃ってる。これで三回目の…」

「貴様ぁあ!!」


俺が本日三回目のスタート前のアガリを宣言するとシャラ家の坊ちゃんが激高して俺の胸倉を掴んでくる。


「おいおい、ファウルだよ。」

「絶対におかしいだろ!おい、ディーラー!こいつを調べろ!」

「お客様、申し訳ありません。この賭博では不正は絶対に起こりえません。なので彼を調べる意味は……」

「ああ、じゃあグルという事なんだな!このクズ共か!俺がどれだけお前らに金を与えてやったと思う!」


因縁を付けられたディーラーは心底困った様に怒鳴り散らす彼を宥めている。

観客たちはそんなディーラーの態度に疑問を口にしていた。


「何故、ディーラーは奴を調べないんだ?確かに不正がこれには起こりえないにしてもこの結果は明らかにおかしい。」

「……いや、似たようなゲーム展開を私は見た事がある。リトルフィクサーが前に連続40回以上勝利していた。結局彼女が飽きて連勝記録はそれ以上伸びなかった様だが。」

「なに?」

「もしかしたら奴はリトルフィクサーの関係者なのでは?だからディーラーも安易に調べようとしないんじゃないか。」

「はん…、とんだ厄ネタを掴まされたな、あの青二才。」


ディーラーは胃を痛めた様子でこちらに子犬の様な顔を向けてくる。

お願いだからもう帰ってくれとも言いたげだ。

しかし、まだ帰る気はない。

目当ての相手がまだ来ていないのだから。


「おい。」

「ああ、お帰り。ありがとね。」

「貴様はずっと何をしている。時間が無いというのを分かっているのか。さっさと上層フロアに連れていけ。」

「まだ行けないよ。だってカードは今持ってないし。」

「なに……?」


元奴隷を解放し終わった兵士が俺にこそこそと耳打ちをする。

見た目は変装の為に今はただの執事の様な格好をしているので少し偉くなった気分になる。


「貴様、私を謀ったのか…!先ほど貴様の馬車を漁っていたのはカードを回収していたのでは無かったのか…?」

「一度も上層のカードを持っているなんて言っていないよ?ただ上層フロアに行きたいなら俺を連れて行ってって言っただけ。そしてそれは嘘じゃない。」


俺は馬車に念のために【加護の調理場】で調理した料理を積んでいた。

ここに来る前に馬車に寄りそれを回収して紙袋に詰め込めるだけ詰め込んだのだ。

俺は紙袋からサンドイッチを取り出す。


「ほら、君もカッカしてないで食べなよ。空腹だとイライラしやすいからね。」

「ふざけ…もぐぉあもぐ。……んぐ。無理やり押し込むな…!」


上層フロアのカードは確かに所持していたが返してしまったので今はない。

あのカードの見た目だけは過去の宿内の映像を振り返れば確認出来るが内部の魔法構造までは調べていなかったので再現は不可能だ。

複製も不可能なら俺に上層フロアに行く手段は一つしかない。

持っている人に出迎えに来てもらう他ない。


「あっ、来た。」

「何?……!」


俺がギャンブルに興じていたテーブルに巨大な物体が落下する。

テーブルがガタガタと振動し卓上にあるカードやチップが踊り、地面にいくつか落ちる。

その巨大な物体は緩慢な動作で体を起こすと気だるげでしかし確かな殺意を感じる目をこちらに向けてくる。


「やあ、スーニディさん。久しぶり。」

「……ここにはもう来ないって、言ってたよねぇ?」

「そんな約束はした覚えがないなぁ。カードを返して欲しいと言われただけだったと記憶しているけど。」

「屁理屈クソ野郎が……。何が素直さが美徳だ……。」


俺の勝負相手、ディーラー、観客、そして兵士は突然現れた長身痩身の彼女に驚き言葉を失っていた。

スーニディさん、今回の司教殺害事件の最重要人物。

というかウェディちゃんの話では実行犯である。

そんな彼女が俺の目の前に現れた。


「安心してよ。別に君の大事なウェディちゃんに会いに来たわけじゃないよ。」

「はぁ、そうですか、お客様ぁ、では大変申し訳ありませんがぁ、お客様は出入り禁止とさせて頂きますねぇ、理由はクソキモいからでーす。」


スーニディさんは分かりやすい接客用の笑顔を顔面に張り付けて俺に野良犬を追い払う様な動作で手を振ってくる。


「今日は君に会いに来たんだ。」

「……うぇええ」


そんな素晴らしい笑顔も俺の一言で吐きそうな顔に早変わりだ。

結構メンタルにくるものがあるが話を進める。


「この前、下層フロアの賭博場に行った時、ウェディちゃんはすぐに俺を迎えに来てくれた。それで俺は思ったんだ。もしかしたらウェディちゃんは下層フロアのスタッフに俺が来たら自分に連絡する様に言っていたんじゃないかって。彼女はこの悪趣味な場所で重要な立場みたいだ。そして彼女に付き添っている君もね。」


もうゲームを続ける必要はない。

俺は喋りながら席を立つ。


「俺を嫌悪していてウェディちゃんを大切に思っている君の事だから、君も賭博場のスタッフに俺の事を伝えているんじゃないかと思った。そうじゃなくてもこの場所で目立つ行動をしていれば賭博場を取り仕切っている君に俺の存在が伝わる。」


俺は彼女ににこやかな笑顔を向けてる。


「いやぁ、来てくれて良かったよ。余りにも来るのが遅いから自分をちょっと疑っちゃった。ありがとう、予想通りに行動してくれて。」

「……それでぇ?私に何の用なのかなぁ?」


青筋を立てて恐ろしく低い声で俺に目的を問い掛けてくるスーニディさん。


「上層フロアの入室カード貸してよ。」

「ははは、……はぁ。嫌だよ、死ね。」

「じゃあ、神の涙の方でも良いよ。」

「…!」


スーニディさんは神の涙というワードに眉をピクリと動かした。

露骨に反応を見せたのは先ほどまで状況を厳しい目で見極めていた兵士だ。


「オ、オオヤ。まさかこいつが……。」

「そこのお前は……」


スーニディさんは何かを考え込むように手を口元にやった。

そして何かが彼女の頭の中で繋がったようで失笑する。


「あー、あー。そういう事か。お前だったのかぁ、司教殺害の犯人にされたのは。それで成程、そこの衛兵とここまでやってきたのか。成程ねぇ……。あっはははは!」


彼女は俺と出会ってから初めて心の底から笑っている様に見える。

その笑いの中にはかなり悪意が含まれている様に感じるが。


「だからスフマミの管轄エリアで今騒動が起きているわけか、はっはは。あの女も偶には良いことをするなぁ。ああ、愉快愉快。」


彼女は腹を抱えて本人が言っている通り本当に愉快そうに笑っている。

言葉の断片を拾うと俺に罪を被せたのは彼女ではないようだ。

スーニディさんは俺が司教殺害犯として捕まっている事を知らなかった様に見える。


「はああ……。本当に面白いなぁ。くっ、ぷっぷ…、残念だったねぇ、私は神の涙を持ってないよ。予想通りに行動してあげられなくて悪かったねぇ。」


先ほどの意趣返しなのか彼女はおどけた様に手をプラプラさせている。


「ふぅん、でも司教を殺したのは君なんでしょ?」

「知らないよぉ、それはお前なんだろぉ?ねぇ、衛兵さんさぁ」

「ウェディちゃんがそう言っていたけど、嘘だったのかな。」

「お前……、ウェディに会ったのか」


彼女はやはりウェディちゃんの名前が俺の口から出るとすぐに殺気を振りまいてくる。


「うん、優しい彼女は君が司教を殺害したから俺は無実だって言ってくれたよ。それに怪我も治してくれたしね。あっ、これは言っちゃいけないだっ……おっと。」


俺の目の前をスーニディさんの蹴りが通り過ぎる。

後ろに下がっていなかったら頭が潰されていたな。


「相変わらず暴力的だね。」

「神の涙、私にはもう関係ないけど。ここでお前を殺してスフマミに貸しを作ってもいいなぁ。……おい。」


彼女が呼びかけると賭博場のスタッフが慌ててやって来る。


「は、はい!スーニディ様!」

「客を帰らせろ。」

「はい!掃除係も呼びましょうか?」

「いらないよぉ。邪魔だ。」


賭博場にいた客たちは場を支配したスーニディさんの影響もあってか大人しくスタッフの指示に従ってこの場からはけていく。

その間、彼女は悪意に満ちた笑顔をこちらに向けて準備運動をし始めた。


「他のフロアで暴れているのはお前のお友達ぃ?可哀そうだけど明日には拷問ショーのスターとして全員デビューだよ。スフマミが事態の鎮静に本腰を入れたって聞いたからねぇ。」

「そのスフマミさんって人は知らないけど。俺のお友達をどうこうするっていうのは難しいと思うけどね。」

「くっふふふ、まあ、あいつのお気に入りの掃除係が下手を打ったら私が恩を売りに行ってやるさ。興味は無かったけど、お前の仲間って聞いたらやる気が出てきたよぉ。可哀そうにねぇ、お前の所為でみぃんな死んじゃうよぉ?」


俺と彼女が会話している内に賭博場の客は消えていった。

今、この場にいるのは俺と兵士と彼女のみだ。


「今日は良い日だなぁ。害虫を駆除出来て、あの女にも恩を売れて」

「穏便にカードを貸して欲しかったんだけどなぁ。」

「残念だけど、それには誠実さが足りなかったねぇ。ははは……じゃあ、死ね。」


彼女はその長身を生かして肩腕を大きく振りかぶると拳をそのまま振り落としてきた。

リーチが長いというのは対人戦闘において大きなアドバンテージだ。

それを後ろにとびのいて回避する。

拳はそのまま床に激突し亀裂を作った。

恐ろしい威力だ、まともに受けていたら通常なら骨は粉々だろう。


「オオヤ!この女が上層フロアのカードを持っているんだな!」

「うん、でも彼女結構強いから気を付けてね。」


俺の付き添いの兵士が背中に隠していた剣を取り出して戦闘態勢に入る。

彼にも料理の加護を与えているがスーニディさんとまともに戦うにはまだ足りていない様に見える。

俺が中心的に戦う必要があるだろう。

俺は魔力で身体能力と打撃能力の向上をさせる。


「避けるなよぉ、正直馬鹿キモ男くん。さあ、どうする?私にご教示して下さったみたいにぃ、素直に土下座して助けてくださぃいって惨めにお願いしてみたらぁ?そしたら君の頭を踏みつけて美しい花を咲かせてあげるよぉ。」

「君ってかなり根に持つタイプだよね。まあ、君の優しさに期待して土下座してみるのも良いけど、折角だからこの場に沿った交渉をさせてもらうよ。」

「はぁ~?」

「さっきやっていた奴隷取りゲームと一緒だよ。俺は君のご要望の俺自身の身体を賭ける。俺が死んだら負け。君が死んだらカードを貸して貰うよ。」

「お前の貧相な体がカードと釣り合うはずがないだろぉ。」

「じゃあ、そこの彼の命も賭けるよ。」


俺は兵士を指さした。

勝手に命をベットされた彼は突然の事にただ呆れて口を開くのみだ。


「まあ、でも安心していいよ。殺さない様に手加減してあげるから。いつでもフォールドしてくれていいからね。君はウェディちゃんのお友達だし、出来るだけ殺したくない。」

「お前マジでうざキモいなぁ。大体お前みたいな雑魚相手で賭けが成立するわけないだろぉ。……って、何を真面目に会話してるんだ私は……さっさと殺そ。」


スーニディさんは周囲にあった重そうなルーレット台を片手で持ち上げるとそれをこちらに投げ飛ばしてくる。

それは最小限の動きでいなせたが視界が遮られていた内に彼女は距離を詰めてきており拳を振り子の様に振ってきた。


回避は無理だ。


だから俺は彼女の近づいてくる腕に俺の拳をただ当てた。


人が消えて静かになったフロアに生々しい骨と肉がひしゃげる音が鳴りひびき、その1秒後には人体が壁にめり込む轟音が鳴った。


「うわ、やり過ぎちゃった。やっぱ手加減は難しいな。」

「オ、オオヤ。貴様、て、手が…。」

「ん?ああ、あー痛たた。本当に俺は防御が苦手だな。」


俺の拳は軽くスーニディさんの腕を殴っただけなのに指が全てひしゃげいてた。

食事の加護と魔法での物理耐性の向上をしたのにこれか。

この有様ではマンティコアの駆除をナクティスにお願いしたのは正解だった。

もう少し威力と耐性のバランスを調整した方がいいな。

自分に不壊効果が付いていた頃はそんな事は意識した事がなかったけれど

継戦能力を今後の為にも意識した方が良いだろう。


まあ、今は俺の事は良い。

俺は壁にめり込んだスーニディさんを観察する。

彼女の片腕は台風後のビニール傘の様になっていた。

つまりぐしゃぐしゃになっている。

彼女は想像以上に脆かった。

ウェディちゃんからの情報で彼女はもっと強いと思っていたのに。

本当に聖域化した教会で司教の殺害を彼女が為しえたのだろうか。


彼女の安否の確認の為に近寄ろうとしたがその前にスーニディさんはピクピクと頭が取れた昆虫の様に動き出した。

そして白い光が彼女の全身を包み込み徐々に彼女の身体を修復していく。


治癒術ヒーリング?しかもこの練度はプリーストクラス以上はある……。」

「ああ~……。油断したよ。お前、とんだ狸野郎じゃないか。クソ詐欺師野郎が。」


負傷を全て修復したスーニディさんは肩を回して俺に文句を言ってくる。


「驚いたな、君って神官だったのか。ウェディちゃんから君は聖教会が嫌いって聞いてたけどな。」

「優し~くて白痴ぃな神様は平等に愛と破滅を振りまいてくれるのさぁ。聖力なんてのは信仰心じゃなくてただそれ自体の理解度で向上するんだからねぇ。」

「ふぅん。何にせよ生きていて良かったよ。それとごめんね。別に油断させるつもりはなかったんだけど。俺は5年間冒険者をやっていてね。宿屋の経営者になったのはつい最近でまだ1年もたっていないんだ。だから俺もどちらかと言うとこういうやり方の方が慣れてるんだよね。」


俺は魔法による威力と物理耐性の向上のバランスを再度調整する。

これに関してはほぼ初めての試みなのでやりながら調整するしかない。

せめて自分の身体を傷つけない様に戦わないと。

同じように聖力によってスーニディさんが自身の身体を強化しているのが分かる。

聖力は魔力を持つ生物に特攻だ。

つまり人間にも大ダメージ。

出来れば攻撃はあまり喰らいたくないな。


「お前みたいなタイプは詐欺師か何も知らない世間知らず馬鹿のどっちかだ。後者の方だと思っていたけど前者だったとはねぇ。ウェディの教育に悪いしさっさと排除しないとなぁ。」

「本当に君ってネチネチしてるね。騙す気は無かったって言ってるでしょ?そんなんじゃ嫌われて友達がいなくなるよ?」

「……お前に人の事が言えるのか?」

「なんで兵士さんがそっち側に立つのさ。」


軽口を叩きながら戦闘の準備をお互いに済ませる。

ナクティス達の事は信頼してるし余程の相手でない限り問題ないだろう。

でも彼女の言うスフマミという人が彼女レベルならナクティス以外が少し心配だ。

さっさと彼女との賭けに勝って皆の所に行かなければ。


「じゃあ、勝負を続けようか。殺さない様に手加減するから。そっちも死なないように頑張ってね。」

「ごちゃごちゃ五月蝿いなぁ。お前はただ、シンプルに、死ね!」


先ほどより遥かに早いスピードで飛んでくる彼女を相手に俺は久々に戦闘の構えを取った。














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