第8話 変化

「ご馳走様でした」

「はい、お粗末様~」


 家に帰って学校の荷物を置いて明日の準備をしてからお風呂に入り、少しゆっくりした。そしてお母さんの手作り料理に舌鼓を打って、片付けを少し手伝ってから自室に戻る。

 今日の晩御飯はデミグラスソースのハンバーグだった。お母さんの作るハンバーグは世界一美味しい。


 そんな事を考えつつ自室のベッドで天井を見上げる。


 今日は始めてダンジョンに行った。事前に調べていたから知ってはいたけれど、ダンジョンに出現する魔物は前世と同じだった。それにダンジョン核だって前世と同じやり方で入手することが出来た。


「完全に私がいた世界よね」


 女神様が言っていたのだから本当だとは分かっていたけれど、実際に自分で見て体験してみるとより一層現実として実感する。


 私がこの世界に来たからこの世界に異世界が繋がってしまったという少しの罪悪感はあるものの、利己的な私はそんなことよりも前世にまた行けるという事の方が嬉しくて仕方ない。


「それなら早く強くならないとよね」


 この世界の人間の弱さでは、あっちの世界では生きていけない。今日助けた女性だってあっちの世界で街を出たらすぐに死んでしまいそうなほど弱かった。

 あっちの世界ならマッスルベアーは初心者用の魔物だ。あの魔物を小指で消し炭に出来るくらいじゃないと、私の家には帰れない。


「当面の目標は星5ダンジョンね」


 そんな事を決心し、寝転がるのを辞めてベッドから起き上がる。そして、そのままの流れで机に向かって座る。


 能力画面が何かが変化したことをずっと伝えてきているので、それを見てみる。


 解放条件も達成したから楽しみね。


 ◆ステータス !

 ◆ニュース

 ◆ダンジョン  !

 ◆改造

 ◆冒険者サイト


 能力画面を開くと、予想通りにステータスの画面にビックリマークが表示されていたが、予想外の所にも表示されていた。


「ダンジョンの項目にも?」


 ステータスで新しく何が開放されているのかも気になるけれど、先にもっと気になるダンジョンの方を見てみる事にした。


【保有ダンジョンポイント 1P】

 ・ダンジョン支配星1 10P

 ・ダンジョン支配星2 30P

 ・ダンジョン支配星3 50P

【保有可能ダンジョン数 1】

 ・未所持


「なにこれ?」


 思いがけない内容が表示されたことに、少しばかり気の抜けた声が出る。


 保有ダンジョンポイントに保有可能ダンジョン数? 1ポイントと未所持……どういう事なんだろう?


 ダンジョンポイントを手に入れるようなことをしたからこの画面が表示されたんだろう、と予想できる。となると思い当たる点は2つだけ。


 ・ダンジョン攻略

 ・ダンジョン核入手


 この2つのどちらかがダンジョンポイントに繋がっていると思う。もう1つの保有可能ダンジョンの方は全く分からない。意味は分かるけど、どうすれば良いのかが分からない。


 取り敢えず今は保留ね。


 ダンジョン保有も分からないし、ダンジョン保有もポイントが足りない。じゃあもう今はすることがない。後でポイント入手の検証だけしようと思う。



 次はステータス画面を見る。


--------------------


【名前】 一条 雫

【年齢】 16

【称号】 神格者(封・隠)、女神の寵愛、転生者(隠)

【冒険者ランク】 F

【保有能力】 精神強化Lv3、身体強化(無)Lv3、身体強化(闇)Lv1→2、思考加速Lv3、演算領域拡張Lv2→3、闇魔法Lv1→2、魔力増強Lv1→2、精神汚染耐性Lv1→3

【適性属性】 無、火、風、光、闇

【次回解放条件】 星1ダンジョンの魔物を倒す [完]

 選択①:身体強化(風)

 選択②:体力増強

 選択③:身体強化(光)

 選択④:剣術


--------------------


「新しい能力ね。全開選ばなかった身体強化(風)は引き続き表示されてるのね」


 今回の選択肢は身体強化2種類と体力増強に剣術という脳筋セットだった。

 脳筋セットとなれば、剣術は取っておきたい。前世でも剣聖や剣王、剣神なんかと剣の腕を競い合っていたし、今世でもかっこいい武器を集めたい。


「女子高生が武器集めって変かしらね?」


 ふとそんな疑問が浮かび上がる。浮かび上がるというか、私の女子高生の部分が恥ずかしさを訴えてくる。けれど、私としては集めたい気持ちが強い。


「収集癖って死んでも治らないのね」


 前世で死ぬまで治らないなんて言われてた気がする。結論死んでも治っていないけど。

 という事で私の羞恥心よりも収集癖という欲求を満たすことにした。



 となると、選択肢4つのうち剣術を選ぶのは確定となる。残る2つは……。


「適当に体力強化と身体強化(光)にしましょうか」


 とまぁ特に深く考えずに選択する。

 そして、変化したステータスを眺める。


--------------------


【名前】 一条 雫

【年齢】 16

【称号】 神格者(封・隠)、女神の寵愛、転生者(隠)

【冒険者ランク】 F

【保有能力】 精神強化Lv3、身体強化(無)Lv3、身体強化(闇)Lv2、思考加速Lv3、演算領域拡張Lv3、闇魔法Lv2、魔力増強Lv2、精神汚染耐性Lv3、剣術Lv1、体力増強Lv1、身体強化(光)Lv1

【適性属性】 無、火、風、光、闇

【次回解放条件】 星1ダンジョンボスを倒す 3/3 

 

--------------------


 次の解放条件は星1のダンジョンボスを3体倒すことみたいだ。あの時に倒した熊は全開の解放条件にカウントされて、今回のにはカウントされていない。しっかりしている。


 それにしても、じっくりとステータスを見てみると成長した能力がおかしい気がする。

 成長したものを羅列してみると、こんな感じだ。


 ・身体強化(闇)Lv1→2

 ・演算領域拡張Lv2→3

 ・闇魔法Lv1→2

 ・魔力増強Lv1→3

 ・精神汚染耐性Lv1→3


 身体強化(闇)と闇魔法はダンジョン道中もボス部屋でも、なんなら訓練のためにダンジョン外でもバレない程度に使っているので問題はない。

 演算領域拡張と魔力増強も常時発動させているからこの成長度合いも納得して良い。


「問題は精神汚染耐性よね」


 精神汚染耐性。これは、その名の通り精神を汚染するタイプの攻撃に対してある程度の耐性を持つ能力の事だ。


 例えば、スムーズに自白させる為に相手の精神や思考を誘導する能力への耐性となる。

 これはあくまでも耐性であって無効ではない。その為、これが発動している時は好戦的になってしまうこともある。


「後藤泰之……」


 事情聴取をしてきた警察。やたらと私の素性を知りたがっていた人物の事を思い出す。これからは精神強化も常時発動していよう。


「精神汚染耐性取っておいて良かったわね本当に」


 能力開放をしておいた私を褒めて、今日はステータスを見るのをやめることにする。明日も学校だし、今日の所は明日の授業の予習をして眠る。

 

 明日は検証のために別の星1ダンジョンに潜ろうと思う。まだまだ能力の等級もレベルも低くて虫程度の強さしか無いので、早く能力をどんどん開放させたい。


 これからは常に精神強化、身体強化各種、体力増強、魔力増強、演算領域拡張を使っていく事にする。思考加速は正直言ってまだ必要ないから後回しね。


「早く強くなりましょう」


 そう決意して数学の教科書を開いた。

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