第84話
好きでもない人と、勝手に結婚させられて幸せになれるはずがない。
「後悔が残るのは、見送る側も一緒で、言いたかったこと、やりたかったこと、たくさんの想いを死という別れによって強制的に断ち切られてしまう。
恋人に対する想いだけじゃない。
おじいちゃん、おばあちゃん、父親、母親、友人、我が子……。亡くなってしまった人物にもう一度会いたい。そう思うことが残された者のエゴだなんて思わない。想いは一方的なものではなく双方で生じているはずだから。だから携帯彼氏だけじゃなく、どんどん増やしていく予定だった。死者と生者を繋ぐ懸け橋として……」
死者と生者を繋ぐ懸け橋……。
実現したら、それは本当に素晴らしいことかもしれない。
「でも……。それって本当にいいことなのかな。生と死は対極にあるべきで、死があるからこそ命は重たくて尊い。命に制限があるからこそ、時間を大切にできるんじゃないかな」
花は散るからこそ美しい。
いつまでも枯れずに咲いていたら、誰もその尊さに気づくことはないだろう。
どんなに美しく咲き誇ってみても、いつでも見られるからと言って、見向きもされなくなるのではないか。
悦子は里美の言葉を反芻(はんすう)するかのように、何度も何度も頷いていた。
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