第67話
妹の絵理香をもてあそんだ押尾と、井上に疑惑の目を向ける里美に対して、村瀬は怒りを押さえることができなかった。
八つ当たりするように、プリクラが貼られたノートを床へと叩きつけた。
ノート中央付近で肩を並べて笑う井上と絵理香のプリクラが目に入った。
「なんで、井上を疑うんだ。だいたいイニシャルだって……」
村瀬は投げつけたノートを拾い上げた。
「まさか……。井上理のOだって言うのか……」
村瀬は頭をかきむしった。
「俺は井上と絵理香がこうやって会っていたことを知らなかった。なぜ隠す必要があるんだ。なにもやましいことがなければ、俺に言うはずじゃないのか」
村瀬はふたりが写るプリクラが貼られたページを乱暴に引きちぎると、慌てて部屋を飛び出した。
「里美ー!」
名前を叫びながら必死でその背中を追う。
村瀬の声に気がついた里美がその場に立ち止まった。
「待ってくれ。さっきはすまなかった」
村瀬は里美の手首を握った。
「俺、どうかしてたんだ。急にあんなことを言われて、頭の中が真っ白になってしまった。井上の下の名前はオサム。イニシャルはOだ」
里美が驚いたように目を見開き、村瀬を振り返った。
「それでも俺は井上を信じたいと思う。あいつは俺の親友だから」
村瀬の言葉に、里美は無言で頷いた。
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