第4章 キーパーソン

第60話

斉藤容子はその知らせを受けて、急いで病院へと駆けつけた。


恋人の丸山久司が死んだ……。


真夜中にかかってきた電話は警察からだった。


交通事故だった。


カーブを曲がりきれずガードレールに突っ込んだらしい。


タクシーを飛ばして、搬送された病院へと急ぐ。


中に入ると、刑事らしき人物と、白衣に身を包んだ人たちが処置室の前を慌ただしく行き来していた。


「警察から連絡もらってきました。丸山は……」


スーツ姿の男に声をかけた。


「こちらです」


男に促されて部屋に入る。


恋人の丸山久司がベッドの上で横たわっていた。


破れた洋服。


傷だらけの顔……。


斉藤容子は、悲鳴を上げると、その場にしゃがみこんで大声で泣いた。


そばに行ってあげたいのに、恋人の遺体を直視できない。


体の力が抜けてしまって、斉藤容子は立ち上がることもできなかった。


「これを……」


目の前に差し出されたのは、丸山が愛用しているグレーのカバン。


斉藤容子は、刑事からそれを受け取ると、ぎゅっと力いっぱい抱きしめた。


「どうして死んでしまったの……。お願いだから嘘だって言ってよ!!」


抱きしめたカバンから、振動が伝わってくる。


斉藤容子は、顔をあげると、カバンの中から丸山の携帯電話を取り出した。

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