第57話
「だって。やっぱりおかしいもん。あの事故も里美も……。何を隠してるの? 困ってることがあるなら言ってよ。私たち友だちでしょ?」
由香が里美の顔を覗き込んでくる。
とてもやさしい顔だ。
里美は、由香のことを絶対に巻き込まないと決めていた。
それは大切な友だちを守るため。
もう、由香を危険な目にあわせたくない。
「今、仕事を探してるの。もうあの店にはいられないし。ずっと家にいるわけにもいかないから、必死になって職探ししてたの」
由香と目をあわすことができない。
「嘘。本当のこと言ってよ」
由香は簡単には引き下がってくれそうにもない。
里美は一度、深く息を吸いこむとこう言った。
「だったら、言わせてもらうけど、元はと言えば由香のせいでしょ? 私が職を無くしたのは、由香のせいなんだから」
「里美……?」
「就職活動の邪魔しないで。しばらく遊べないし、メールもらっても返せないと思うから」
里美は立ち上がると、由香に背中を向けた。
――ごめんね。由香……。
こみあげる涙を気づかれないように拭う。
「じゃ、私行くね」
里美は振り向かずに、そのまま店を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます