第56話

「里美!」


警察署を出て自宅に戻った里美は、家の前で声をかけられた。


久しぶりに聞く友の声。


「由香! どうしたの?」


携帯彼女の出現、浅沼の失踪で忙しく動いていたため、里美はしばらく由香と連絡を取っていなかった。


「最近全然会ってなかったし、里美どうしてるかなって思って」


里美は家に上がるようすすめたが、由香は曖昧に言葉を濁す。


里美の母親、悦子に対し、どのような態度を取っていいのかわからないからなのだろう。


あい・すくりーむを作ったのが悦子だとわかってから、由香はまだ一度も悦子とは顔を合わせていない。


里美は由香を近くのファストフードの店へと連れ出した。


「あの時から、ぜんぜん連絡くれなくなったから心配してたの」


由香は本当に心配してくれていたのだろう。


不安げな表情からそれは容易に察することができた。


「ごめんね。ちょっと色々忙しくて」


里美はハンバーガーを手に取り、豪快にかじりつく。


由香に全てを見抜かれてしまいそうで怖かった。


「気になってたんだけど……。あの時の歩道橋の事故。あれ、何か関係あるのかな?」


「何かって?」


「携帯。また携帯が関わるようなことが起きてるのかもしれないって。だから里美は色々調べて……」


「ちょ! 待ってよ。そんな訳ないじゃん」


里美は慌てて由香の言葉を遮った。

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