第55話
里美は村瀬から聞いた話と、自分が目撃した携帯彼女が絵理香に似ていたことを五十嵐に話した。
「つまり、事件の可能性もあるってことです」
里美は五十嵐の顔を覗きこんだ。
五十嵐はタバコを指に挟んだまま微動だにしない。
「絵理香さんは死んでいる。他人のそら似でなければ、これはもう曲げようのない事実です。事故か自殺か……もしかしたら殺人ってことも」
里美の言葉に、五十嵐は低いうなり声をあげた。
「私、浅沼さんを捜すのと同時に、携帯彼女エリカさんも捜します。村瀬さんの元へ返してあげなくちゃ」
「あまり無茶はしてほしくない。できれば警察に任せてもらいたいんだが……。言ってもどうせ聞いてはもらえないんだろうがね」
五十嵐があきれたようにため息をつく。
「とにかく、こまめに連絡を入れること。何か情報を掴んだら絶対に報告すること。これが条件だ。事件だとすると身に危険が及ばないとも限らない」
「わかってます。少なくとも浅沼さんを見つけ出し携帯彼女を徐霊するまでは無茶はできませんから。それで浅沼さんの足取りはつかめたんですか?」
曇っていた五十嵐の表情がさらに曇る。
その様子から捜索は難航しているものと思われた。
「状況は厳しい。だが一刻も早く見つけ出す。携帯彼女が原因と思われる事故もいくつか報告されているんだ。まだ確証はないんだが」
五十嵐は後半声をひそめた。
のんびりしている暇などない。
だが里美にはどうすることもできない。
浅沼捜しは警察に任せるしかないのだ。
日本中あてもなく浅沼を捜し回ることなど里美にはできない。
海外に行ってしまった可能性もある。
「お母さんはどうしてる?」
「今のところ、浅沼さんと連絡を取っている様子はありません」
本当なら、こんなスパイのような行動は避けたかった。
だが今は一刻を争う。
里美は自ら悦子の監視役を買ってでたのだ。
「そうか。お母さんのこと、絵理香さんのこと、変わったことがあったらすぐに連絡するように」
五十嵐はしつこいくらいに里美に言い聞かせた。
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