第54話


村瀬と別れた里美は警察署へと急いだ。


途中、何度もファミリーレストランを振り返った。


村瀬の妹である絵理香が、行方不明になっていた。


そして、携帯彼女になっているということは……。


里美はかぶりを振った。


「言えない。絵理香さんがもう死んでいるだなんて」


携帯彼氏は死者の霊だった。


つまり携帯彼女もそれと同じ。


兄の村瀬は妹の無事を信じているに違いない。


村瀬にこの事実を告げることは躊躇われた。


絵理香は、絵理香の遺体はいったいどこにあるのだろう。


浅沼を見つけ出し除霊を済ませる前に、携帯彼女『絵理香』を見つけ出す必要がある。


どこに体が眠っているのか、絵理香本人の口から聞きだすのが一番早い。


「また余計なことに首つっこんじゃったかな……」


里美は警察署を見上げて、独り言をつぶやいた。


黙ってやり過ごすことなど、里美の性格が許すはずがなかった。


五十嵐は先に会議室で待っていた。


相変わらずタバコをふかし、音を立てながらお茶を啜っていた。


「お待たせしてすみません」


里美はこの前と同じく、入口に近い椅子へと腰をおろした。


「村瀬さんの妹さんに、捜索願いが出されているんですよね? 彼女は……もう亡くなっています」


五十嵐がブッとお茶を噴き出す。


手のひらで口元を拭いながら五十嵐は激しく咳き込んだ。


「それはどういうことだ」

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