第54話
◇
村瀬と別れた里美は警察署へと急いだ。
途中、何度もファミリーレストランを振り返った。
村瀬の妹である絵理香が、行方不明になっていた。
そして、携帯彼女になっているということは……。
里美はかぶりを振った。
「言えない。絵理香さんがもう死んでいるだなんて」
携帯彼氏は死者の霊だった。
つまり携帯彼女もそれと同じ。
兄の村瀬は妹の無事を信じているに違いない。
村瀬にこの事実を告げることは躊躇われた。
絵理香は、絵理香の遺体はいったいどこにあるのだろう。
浅沼を見つけ出し除霊を済ませる前に、携帯彼女『絵理香』を見つけ出す必要がある。
どこに体が眠っているのか、絵理香本人の口から聞きだすのが一番早い。
「また余計なことに首つっこんじゃったかな……」
里美は警察署を見上げて、独り言をつぶやいた。
黙ってやり過ごすことなど、里美の性格が許すはずがなかった。
五十嵐は先に会議室で待っていた。
相変わらずタバコをふかし、音を立てながらお茶を啜っていた。
「お待たせしてすみません」
里美はこの前と同じく、入口に近い椅子へと腰をおろした。
「村瀬さんの妹さんに、捜索願いが出されているんですよね? 彼女は……もう亡くなっています」
五十嵐がブッとお茶を噴き出す。
手のひらで口元を拭いながら五十嵐は激しく咳き込んだ。
「それはどういうことだ」
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