第47話

村瀬は、絵理香の捜索願を出した中央警察署へと急いだ。


絵理香であって欲しくない、村瀬は強く願っていた。


それなのに、頭の中では悪い方向へとイメージが膨らむ。


村瀬は屍となった絵理香との対面シーンを必死の思いで頭から追いやった。


足がふらついた。


視界が真白になった。


耳が何かに塞がれているかのように聞こえにくい。


自分の精神と、身体がバラバラになってしまったようで、村瀬は恐怖を覚えた。


駅の改札を抜けたところで、胸ポケットにしまってあった携帯電話が、激しく震えだした。


着信は井上からだった。


「栗原の携帯電話は見れたのか?」


仕事の合間にかけてきてくれているのだろう。


井上の電話から、ざわついた音が聞こえている。


「あぁ、教えてもらったスポーツジムで確認してきた。携帯は見れたけど、絵理香の画像はなかったよ……」


村瀬の返答に、井上はしばらくの間、黙っていた。


井上は何と言っていいのかわからずに、困っているのだろう。


「これから警察に行ってこようと思うんだ」


「なんかあったのか?」


井上が慌てた声を出す。


「身元不明の遺体が見つかったって、ニュースでやってたんだ。もしかしたら絵理香かもしれないと思って、確かめに行ってくる」


「本当か!? 遺体が見つかったのはどこの山からだったんだ?」


「わからない。どこで見つかったのかは聞き逃したんだ。詳しいことがわかったら、連絡するよ」


村瀬が電話を切ったのと同時に、ホームに電車が滑り込んできた。


大きな深呼吸をした後、村瀬は電車へと乗り込んだ。

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