第45話
◇
栗原が死んでいた……。
村瀬は自室で頭を抱えていた。
井上の知り合いである新聞社の知人からもらった情報を元に、村瀬は栗原が亡くなったスポーツジムに足を運んだ。
そこで、栗原の携帯電話を見ることができた。
もう少し遅ければ、栗原の家族に返されてしまうところだった。
ジムのスタッフが取り出した栗原の携帯電話。
そこに、絵理香の姿はなかった。
村瀬は最初、絵理香の画像が映っている携帯電話が人から人へと渡っているのかと思っていた。
だが、そうではないということが、これで証明された。
「絵理香の画像は携帯から携帯へと移っていっているんだ……」
村瀬は、大きなため息を漏らす。
無理やり押しかけてきた、婚約者である亜矢を追い出す気力もないまま、村瀬はボーっとテレビの画面を眺めていた。
「って、村瀬さん聞いてるの?」
亜矢に大声を出され、村瀬は我に帰った。
「あ、ごめん。聞いてなかった……」
亜矢はわざと頬を膨らませ、ふてくされた表情を見せる。
婚約者の亜矢とは、去年の春に知り合った。
村瀬の勤めている会社に亜矢が新卒で入社してきたのだ。
元気で明るい亜矢は、すぐに社内で人気者になった。
村瀬も、そんな亜矢に惹かれるまでそう時間はかからなかった。
夏も過ぎたころ、 ふたりはどっちから言うでもなく付き合い始めていた。
そして、半年が経過した3月。
村瀬は亜矢にプロポーズした。
亜矢は婚約を済ませても村瀬のことを苗字で呼ぶ。
同じ会社にいたのだから、苗字で呼ぶことに慣れてしまっているのもわかるが、亜矢も近い未来『村瀬』になるのだ。
いつもそのことで亜矢をからかっていた村瀬だったが、ここ最近はそんな他愛もないことで、笑う余裕すら無くしていた。
絵理香は自分より3歳も年下の姉ができることに困惑していたが、笑顔で結婚を祝ってくれていた。
亜矢はプロポーズ後、会社をあっさりと辞め、結婚式に向けての準備を着々と進めていた。
そんな矢先、妹の絵理香が失踪してしまったのだ。
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