第38話

「そんな!」


里美はすぐに警察署に電話をかけた。


「浅沼さんはまだ事情聴取中なのかもしれない。せめて五十嵐さんと連絡さえつけられれば」


里美は祈る思いで携帯電話を握りしめていた。


だが、そのどちらともコンタクトを取ることはできなかった。


直接警察署へ出向いたときとまったく同じ対応で、里美の電話はあっさりと切られてしまった。


「どうしよう……」


里美は悦子を見つめた。


悦子は裕之の携帯電話をじっと眺めている。


「お母さん。教えて。携帯彼氏って、あい・すくりーむっていったい何なの? どうして携帯彼女が?」


里美の言葉に、悦子がゆっくりと口を開いた。


「携帯彼氏は、浮かばれない霊だってことは、里美ももう知っているでしょ? あい・すくりーむは繋いだ人に画像を作らせて、その顔に似た霊が携帯電話に降霊される仕組みになっていたの……」


里美は自分が携帯彼氏を作った時、実際にダウンロードされた顔とパーツを組み合わせて作った時の顔に若干の違和感を覚えていた。


悦子の話を聞いて、その理由がわかった。


「携帯彼女が準備中だったのは、制作するためのパーツが整っていなかったからなの」


「パーツ?」


「降霊の仕組みは、どちらも変わらない。ただ女性用の髪型だったり、大きな瞳だったり、女の人の顔を作るのに必要なパーツができていなかっただけなの」


里美はあい・すくりーむで携帯彼氏を作った時のことを思い返していた。


「たしかに、携帯彼氏を作った時、女の子をつくれるようなパーツはなかったような気がする……。でも、実際に携帯彼女はダウンロードされているのはなんで……あ、そうか」


たまたま作った携帯彼氏が、女性っぽかったとしたら――?


その顔に似た霊がいたとしたら――?

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