第23話
◇
「おう! 村瀬じゃないか! 久しぶりだな」
村瀬が駅前を歩いていると、体のデカイ男にすれ違いざまに声をかけられた。
「井上! 突然声をかけられたから驚いたよ」
井上 理(イノウエ オサム) は、村瀬の古くからの友人で、高校、大学と同じ学校に進学した。
2年前に井上が結婚してからは、会う機会が減っていた。
「元気にしてたか? あ、そうだ、絵理香ちゃんはどうしてる?」
井上の口から妹の名前が飛び出し、村瀬は困惑した。
学生の頃、井上はよく村瀬の家に遊びに来ていた。
面倒見のいい井上は、いつも絵理香を気にかけ、話かけたり、勉強を見てくれていた。
そんな井上に、絵理香はとてもなついていて、井上の方も本当の妹みたいに絵理香を可愛がってくれていた。
井上が絵理香の失踪を知ったら驚くに違いない。
「絵理香ちゃんに、なんかあったのか?」
いつまでも答えない村瀬を見て、井上が心配そうな表情を浮かべる。
「時間あるか? 立ち話もなんだし……」
村瀬と井上は、一番近い喫茶店へと向かった。
店の中は、コーヒーの香ばしい匂いに包まれていた。
村瀬と井上は、窓際の席へと腰を下ろした。
「どうしたんだよ。わざわざ喫茶店に入らなきゃ話せないことなのか?」
井上が不安げな表情で村瀬を見つめる。
「あぁ。ちょっと話が長くなる。結論から言うと絵理香が行方不明になった」
「なんだって!?」
井上は大声を上げたかと思うと、腰を浮かして身を乗り出してきた。
そこへコーヒーが運ばれてきて、井上はばつが悪そうに椅子に腰かけなおし咳ばらいをした。
「行方不明って、どういうことだよ」
村瀬は、会社の同僚だった土屋が死んだこと、土屋の携帯電話に絵理香に似た人物が映し出されていたこと、土屋の携帯電話を拾ったと思われる同じ会社のOL長野美幸が死んで、その恋人だった澤田が死んでしまったことを話した。
「その澤田って男の携帯にも、絵理香ちゃんに似た画像があったのか……」
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