第23話


「おう! 村瀬じゃないか! 久しぶりだな」


村瀬が駅前を歩いていると、体のデカイ男にすれ違いざまに声をかけられた。


「井上! 突然声をかけられたから驚いたよ」


井上 理(イノウエ オサム) は、村瀬の古くからの友人で、高校、大学と同じ学校に進学した。


2年前に井上が結婚してからは、会う機会が減っていた。


「元気にしてたか? あ、そうだ、絵理香ちゃんはどうしてる?」


井上の口から妹の名前が飛び出し、村瀬は困惑した。


学生の頃、井上はよく村瀬の家に遊びに来ていた。


面倒見のいい井上は、いつも絵理香を気にかけ、話かけたり、勉強を見てくれていた。


そんな井上に、絵理香はとてもなついていて、井上の方も本当の妹みたいに絵理香を可愛がってくれていた。


井上が絵理香の失踪を知ったら驚くに違いない。


「絵理香ちゃんに、なんかあったのか?」


いつまでも答えない村瀬を見て、井上が心配そうな表情を浮かべる。


「時間あるか? 立ち話もなんだし……」


村瀬と井上は、一番近い喫茶店へと向かった。


店の中は、コーヒーの香ばしい匂いに包まれていた。


村瀬と井上は、窓際の席へと腰を下ろした。


「どうしたんだよ。わざわざ喫茶店に入らなきゃ話せないことなのか?」


井上が不安げな表情で村瀬を見つめる。


「あぁ。ちょっと話が長くなる。結論から言うと絵理香が行方不明になった」


「なんだって!?」


井上は大声を上げたかと思うと、腰を浮かして身を乗り出してきた。


そこへコーヒーが運ばれてきて、井上はばつが悪そうに椅子に腰かけなおし咳ばらいをした。


「行方不明って、どういうことだよ」


村瀬は、会社の同僚だった土屋が死んだこと、土屋の携帯電話に絵理香に似た人物が映し出されていたこと、土屋の携帯電話を拾ったと思われる同じ会社のOL長野美幸が死んで、その恋人だった澤田が死んでしまったことを話した。


「その澤田って男の携帯にも、絵理香ちゃんに似た画像があったのか……」

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