第2章 失われた手がかり

第21話

携帯電話の着信音が鳴り、栗原稔は体をビクっと痙攣させた。


聞き覚えのある着信音だったが、自分のものではなかった。


その音は、カバンの中から聞こえているようだった


「もしかして澤田の携帯か!?」


栗原は慌ててカバンをまさぐると、澤田の携帯電話を取り出した。


澤田が死んでしまったことを知らない人からかもしれない。


そう思い、栗原は慌てて通話ボタンを押した。


本来なら、澤田の家族に返さなければならない。


だが、栗原にはそれができなかった。


どうしても、澤田の携帯電話が気になったのだ。


澤田の携帯電話に残されていた女の画像が気になっていた。


画面に映る女は、どこか儚げで、とても寂しそうな表情を浮かべていた。


これまで澤田の携帯電話の待ち受けに、女の画像が設定されているなんて気がつかなかった。


澤田の彼女が不審死してからあまり日がたたないうちに、今度は澤田まで死んでしまった。


この女が何か関係しているのではないかと、栗原は考えていた。


「もしもし?」


栗原が声をかけるが、電話の相手は答えない。


イタズラ電話か間違え電話かと思い、栗原が電話を切ろうとした瞬間に、か細い声が聞こえてきた。


「……どこ?」


小さくて聞こえにくいが、女の声であることは間違いなかった。


栗原は待ち受けに残されていた女の顔を思い出した。


その女が澤田の携帯電話にかけてきているのかもしれない。


「あんた誰だ?」

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