第20話

病院に着いた里美は、正面ではなく、まずは裏手へと回った。


里美の思ったとおり、裏には緊急用の出入り口があり、そこに救急車が1台止っていた。


後ろのドアが開け放たれたままになっており、今まさにここへ搬送されてきたばかりとわかる。


里美は恐る恐る病院内へと足を踏み入れた。


日曜日ということもあり、病院の中はとても静かだ。


自分の立てる足音が壁に反響している。


里美は緊急処置室と書かれた部屋を見つけた。


だが扉は固く閉ざされており、中の様子をうかがうことはできない。


里美は扉に近づき耳をそばだててみたが、中に人のいる気配はなかった。


携帯彼氏はラブゲージが0になった瞬間に、持ち主に死が訪れていた。


だとすると、ここへ運ばれてきた男が助かる可能性はない。


里美は辺りを見回した。


どこへ行けば、歩道橋から身を投じた男に会うことができるのか……。


手術室か、霊安室か、それとも別の病院か。


里美は一度、表に出て携帯電話を取り出した。


着信履歴を確認するが、五十嵐からの連絡はまだない。


「五十嵐さん、何してるの? まだ終わってないのに……。早くしないと」


里美は携帯電話を胸にあて、空を仰いだ。


「これは神様からの罰ってことなの……?」


雲の切れ目からのぞく青空を睨みつける。


再び訪れた恐怖。


その真っただ中に置かれた里美は、強く決意する。


――絶対終わらせる。それが私のできる償いだから……。

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