第17話

目的の駅で電車が止まる。


里美は自動扉を手で押し開き、勢いよく改札を目指して駆け出した。


春の心地よい風が、里美に纏まりついて来る。


それを蹴飛ばしながら、警察署までの道のりを急いだ。


厳粛な建物。


その前には広い駐車場があり、パトカーが数台停まっている。


里美は動じることなくその建物の中へと歩を進めた。


初めて入る警察署に、里美は戸惑った。


ここで悦子と浅沼の事情聴取が行われていることは五十嵐から聞いて知っていたが、どこに行けば2人に会えるのかはわからなかった。


「何か?」


入口付近でウロウロしていた里美に、中年の警官が話しかけてきた。


「あ、あの。今ここで事情聴取されている上野悦子の娘なんですが、母に合わせてもらえますか?」


警官は渋い表情を浮かべる。


「それはちょっと無理ですね……」


「急用なんです! どうしても伝えなければならないことがあって」


必死で頭を下げる里美に、警官は深いため息を漏らした。


「そう言われても無理なものは無理です。どうぞお引取りください」


露骨に迷惑そうな顔をしながら、警官が出口の方向に手のひらを差し出した。


「それじゃ、浅沼さんに会わせてください! 彼は刑事さんだから会うことできますよね?」


里美は涙ながらに訴えかけた。


「できません。あなた一体なんなんですか?」


警官は鼻の穴を大きく開きながら呆れたように息を吐き出した。


「五十嵐さんを呼んでください」


里美は強い口調で言い放った。


「いないよ」


「どこにいるかわかりますか? 連絡だけでも取ってもらえませんか」


「しつこい人だな。あなたの言ってることは全部できかねます。五十嵐が戻ったら連絡させますから」


警官は再び出口の方に向って手のひらを差し出す。


里美は半ば追い出されるようにして、警察署を後にした。

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