第14話


上野里美は、歩道橋を降りた先にある公園のベンチに腰をおろした。


隣に腰掛ける小野寺由香も、まだ顔色は真っ青だった。


里美の鼓動は落ち着かないままだった。


さっき見たもの――。


気のせいだと思いこもうとしても、否応なしに鮮明に蘇る携帯電話の画面。


――ラブゲージ0 


終わったはずじゃなかったのか。


アレは間違いなく……。


「ご飯行くような気分じゃなくなったね」


由香がボソっとつぶやく。


携帯彼女――。


まさか、世に生み出されていただなんて……。


もう、親友の由香を巻き込みたくなかった。


携帯彼氏を作りだしたのは、母親の悦子だった。


その責任の一端は、娘の自分にもあると考えている。


あれほどの恐怖を経験し、辛い目に遭わされた由香に、再び関わりを持たせたくはなかった。


それなのに、由香と一緒のときに出会ってしまった。


忌まわしき携帯彼女に――。


「さっき、何を指さしてたの? 携帯?」


由香の質問に、里美は声が裏返ってしまった。


「え? 何のこと?」


もしかしたら、由香は見ていないのかもしれない。


画面に映し出された、冷たい表情を浮かべた女を。


殺気立った目つき。


薄笑いを浮べた唇。


怖い。


一目見た瞬間、里美はそう感じた。


画面を通じて、ひしひしと怨念が伝わってきた。


「里美、携帯電話を拾ったあと、すごい顔して指さしたでしょ? 何があったの?」

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