第14話
◇
上野里美は、歩道橋を降りた先にある公園のベンチに腰をおろした。
隣に腰掛ける小野寺由香も、まだ顔色は真っ青だった。
里美の鼓動は落ち着かないままだった。
さっき見たもの――。
気のせいだと思いこもうとしても、否応なしに鮮明に蘇る携帯電話の画面。
――ラブゲージ0
終わったはずじゃなかったのか。
アレは間違いなく……。
「ご飯行くような気分じゃなくなったね」
由香がボソっとつぶやく。
携帯彼女――。
まさか、世に生み出されていただなんて……。
もう、親友の由香を巻き込みたくなかった。
携帯彼氏を作りだしたのは、母親の悦子だった。
その責任の一端は、娘の自分にもあると考えている。
あれほどの恐怖を経験し、辛い目に遭わされた由香に、再び関わりを持たせたくはなかった。
それなのに、由香と一緒のときに出会ってしまった。
忌まわしき携帯彼女に――。
「さっき、何を指さしてたの? 携帯?」
由香の質問に、里美は声が裏返ってしまった。
「え? 何のこと?」
もしかしたら、由香は見ていないのかもしれない。
画面に映し出された、冷たい表情を浮かべた女を。
殺気立った目つき。
薄笑いを浮べた唇。
怖い。
一目見た瞬間、里美はそう感じた。
画面を通じて、ひしひしと怨念が伝わってきた。
「里美、携帯電話を拾ったあと、すごい顔して指さしたでしょ? 何があったの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます