第3話
それは自分のロッカーから聞こえていた。
だが着信音は自分のものではなかった。
「大変! 忘れてたわ」
慌てて女は縦長の扉を開いた。
蝶番(ちょうつがい)が耳障りな甲高い音を発する。
ふくらみを帯びたカーディガンのポケットから、着信ランプが透けて見えた。
女はその携帯電話の着信ボタンを押した。
「もしもし。私、桜町総合病院の看護師をしてます飯塚と申しますが、こちらの携帯電話の持ち主の……」
「教えて。……はどこ?」
聞こえてきたのは女の声だった。
「教えて。……はどこ?」
雑音が混ざり、よく声を聞き取ることができない。
気味が悪くなり、飯塚はその携帯電話の【切】を押した。
直後に自分の携帯電話が鳴り響き、飯塚は驚いて体を大きく震わせた。
カバンの中から携帯を取り出す。
表示されている番号は全く知らない番号だった。
「もしもし?」
訝しげに答えると、雑音に混ざり女の声が聞こえてきた。
「教えて。……はどこ?」
飯塚は驚いてすぐに【切】ボタンを押した。
画面を見つめたまま、飯塚は小刻みに震えだした。
「この人……」
そこに映し出されていたのは――。
髪の長い綺麗な女だった。
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