プロローグ
第2話
四方をコンクリートに囲まれた殺風景なロッカールーム。
病院自体は3年ほどまえに大幅なリフォームがなされ、昔の姿を残しているのはこのスタッフが利用する更衣室だけだった。
地下にあるため、電気を点けなければ闇を落としたように真っ暗だ。
どこからともなく、ひんやりとした空気が流れ込む。
その涼しさを同じフロアにある霊安室のせいにするものは誰もいない。
それを認めてしまえば、ここへ足を踏み入れることができなくなるばかりか、看護師という仕事を続けていくことが難しくなる。
生と死のはざまに立たされた過酷な仕事。
繰り返される死を悲しみ嘆き怖がっている暇はなかった。
その着信音は、こもったように濁った音色だった。
女は始め、それが自分のロッカーから聞こえていることに気がつかなかった。
規則的に並んでいる扉を一瞥(いちべつ)すると、ブラウスのボタンに手をかけた。
鳴りやまない着信音。
ピアノソナタに似たような曲があったなと女は思った。
ゆったりとした曲調のなかに、強さや悲しみが込められているそんな風に聞こえた。
ロッカーの扉に指を置いた瞬間、女は小さく「あっ」と声を漏らした。
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