第1章 再来

第4話

間に合わなかった。


村瀬 隆司は肩で息を吐き出しながら歩道橋の上でうな垂れた。


聞こえてきた悲鳴は澤田 明憲のもので間違いないだろう。


やっとの思いで掴んだ澤田の身元。


こうなる前に、なんとしてでも澤田の携帯電話を手に入れたかった。


いや、手に入れなければならかなった。


「絵理香……」


村瀬は野次馬を押しのけ、車道を見下ろした。


そこに転がる死体には目もくれず、小さい長方形の物体を探す。


これで3人目だった。


怖いという思いはもうない。


血に、死体に、この状況に順応していっている自分が恐ろしく感じた。


歪な形で横たわる澤田の下から、赤黒い液体がどんどん染み出てくる。


「澤田ー!」


騒然とした空気を切り裂くように、男の声が響く。


村瀬はその声の方向へと視線を向けた。


歩道橋の中央付近で、大きく身を乗り出し下を覗き込んでいる男の姿があった。


その顔からは血の気が引き、体がわなわなと震えていた。


村瀬はその男の後ろにいる女に目がいった。


その女は明らかに様子がおかしい。


携帯電話を手に握り締めたまま、大きく目を見開いている。


その傍らには、座り込んでいる女。


普通じゃない。


村瀬はそう直感した。


「まさか!」

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