第57話

ネオンカラーの文字が点滅し、ピンクの薔薇が画面を飾る。


ハートマークが左右に揺らぎ、巻き髪の女の子と茶色い髪の男の子のイラストが仲良くならんでいる。


若い子をターゲットにしたサイトであることは明らかだった。


長々続く説明事項を、一言一句漏らさずに熟読する。


里美は、【同意する】のボタンを押そうとして一瞬ためらった。


真由美と絵里の顔が浮かんだ。


2人は悲痛な面持ちで里美を見つめている。


それは無念を晴らしてくれと言っているようにも、ダウンロードしてはいけないと言っているようにも見えた。


「一体どっちなの……?」


聞いてみても、答えが返ってこないことはわかっている。


それでも聞かずにはいられなかった。


「答えてくれないのなら、真実を突き止めるために押すしかない……」


里美は【同意する】のボタンを押した。


指が震えた。


後戻りできないところへ迷い込んでしまったような、恐怖と後悔が体中を包み込む。


そんな思いとはうらはらに、ポップで明るい画面が開く。


【まずは携帯彼氏の顔を作ろう!】


画面の指示に従い、次へをクリックする。


【輪郭はどれにする?】


卵型、三角、四角、面長、ベース型、様々な顔の形が現れる。


どうやらアバターを作るやり方と同じようだ。


里美は適当に各パーツを選び、OKボタンを押した。


【この彼氏に決める?】


できあがった携帯彼氏はお世辞にもかっこいいとはいえず、里美はあまりの不出来に吹き出した。


――せっかく作るなら、もっとかっこいい方がいいか。


里美は迷わずやり直しのボタンを押した。


気がつけば、携帯彼氏作りに夢中になっていた。

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