第47話

絵里はロッカールームに入ってからも、携帯電話を手から離さなかった。


閉店直後のロッカーは身動きが取れないほどごった返している。


里美と絵里は、混雑が収まるまでロッカールームに設置されている化粧台で待機していた。


里美は明日、どうやって絵里の携帯電話を取りあげるか考えていた。


言ってわかってもらえないのだから、盗むしか方法はない。


隣で楽しそうに会話を続ける絵里が、まともに取り合ってくれるとは思えない。


「さ、空いたから身支度して帰ろう」


絵里に声をかけられ辺りを見渡すと、あれだけ混んでいたロッカールームから人が消えていた。


誰もいなくなれば、ロッカールームも広く感じる。


里美はロッカーに鍵を差込み、透明のビニールバックの中身を自分の鞄へと移した。


絵里のロッカーは、里美のちょうど裏側にある。


姿は見えないが、ゴソゴソと物を動かす音と話し声が聞こえている。


よっぽどリクを気に入ったようだ。


里美は絵里に聞こえないようにため息をこぼした。


静かな室内に、突然ロッカーの扉が激しく叩きつけられる音が響いた。


そして、耳を劈く甲高い悲鳴。


絵里の声だ。


里美は慌てて裏側のロッカーに向かった。


「絵里! どうしたの!?」


ロッカーの切れ目から絵里の足が見えた。


絵里の姿を確認した途端、里美の息は止まった。

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