第46話

落としたはずのリップグロス、リクの頭を掻くクセ、ただならぬ気配……。


楽観してはいけないと、里美の心で警鐘が鳴らされた。


絵里は知らない。


携帯彼氏リクが、真由美の死に関わっていたかもしれないという事実を。


リクを奪い返すには、絵里の携帯電話ごと取り上げてしまうしか方法はない。


今日の里美の服にはポケットがない。


透明のバックに入れては絵里に見つかってしまう。


里美はリク奪還を明日に引き伸ばした。


何も知らない絵里は、相変わらず仕事そっちのけでリクをかまい続けている。


店長が戻らなかったこともあり、絵里はずっと携帯の画面を指でなぞったり、声を立てて笑ったりしていた。


「見て、ラブゲージがもうすぐ100になるんだ。100になったらどうなるんだろう。プロポーズとかされちゃうのかな」


絵里が自慢げに携帯電話を見せつけてくる。


ラブゲージは98まで上がっていた。


里美はゲージが0にならない程度にしかリクをかまわなかったので、こんなにも早くゲージが上がるなんて知らなかった。


それに……。


「私はリクに好きだなんて言われなかったよ」


「うーん、きっと相性とかもあると思うよ。それにケー彼はたくさん話とかしてあげなくちゃなかなか好きになってもらえないんだよ」


「仕事中もずっとやってれば世話ないけどね。明日はちゃんと働いてよ。店長だっているだろうし」


「わかってるよ。今日だけ。だって早くラブゲージを100にしたかったんだもん」

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