第44話
「私、諦めないから」
里美の言葉にリクは不敵な笑みを浮かべる。
里美はそのまま絵里に携帯電話を返した。
「ごめん。リク怒った? で、さっきの話の続きだけどね……」
絵里はレジカウンターに隠れるように携帯電話を置き、リクとの会話をやめようとしない。
「いらっしゃいませ」
店内に2組の客が同時に入ってきた。
絵里はいらっしゃいませを言うこともなく、接客する気もないようだ。
「ちょっと、いい加減にして。お客さんがいるんだから」
「大丈夫、見えてない見えてない。あ、お客さんこっち見てる。里美さん行って来てよ」
ちょうど客からも呼ばれてしまったので、里美はしぶしぶ客の方へと向かった。
「すみませーん」
もう1組の客が絵里に声をかける。
絵里は携帯電話に視線を落としたままだ。
「すみません」
再び声をかけられた絵里は、いやそうな素振りを露骨に表しながらも、客の元へと歩を進める。
――絵里の携帯からリクを取り戻すチャンスかも。
里美はなんとか上手いこと客をあしらい、絵里より先にレジカウンターへと戻った。
絵里が応対している客は、そうとう時間がかかりそうだ。
両手にシャツやジャケット、スカートを抱え、ひっかえとっかえ体に当てては鏡を覗きこんでいる。
里美は絵里にリクを寝取られた。
今度は里美がリクを寝取ってやればいいだけのことだ。
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