第3章 第二の犠牲者
第35話
真由美が自殺を図った日から2週間もの間、里美は仕事を休んでいた。
とても働きに行ける気分にはなれなかったし、里美自身、真由美の葬儀が済むまでは、心の区切りをつけることができなかったからだ。
「店長、長い間お休みしてすみませんでした」
「あー、大丈夫だった? 心配してたのよ。私は全然構わないんだけど、相川さんは大変だったかもしれないわね」
店長は瞳を動かすことなく、唇だけで笑って見せた。
里美の店は、アパレルメーカーとしてはそれほど大きい方ではなかったが、子供服、ヤング、ミセス、紳士服と、全ての商材を扱う会社だ。
今の店長の石川は3カ月前に紳士服の店から里美の勤めるヤング部門へとやってきた25歳のベテランだ。
いつもニコニコしているが、目は決して笑わない。
笑顔の影から容赦なく嫌味の弓を放ってくる。
「後でよく謝っておきます」
「そうね。そのほうがいいわね。あ、それから商品がだいぶ入れ替わったから、しっかりチェックしておいてね」
目線を店長から店内へと移す。
前回出勤したときにはまだ残っていた冬物は、すっかり姿を消していた。
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