第34話

真由美の死が自殺と断定されたのも、携帯彼氏の情報が全て消えていたから?


真由美の携帯に残されていたのは、リクの静止画と2つのメッセージ。


警察があれを見ても、何の不審も抱かなかったのだろうか。


ぱっと見、アイドルやアーティストの待ち受けに見えなくもない。


メッセージは歌の歌詞か何かだろうぐらいに思われたとしたら、そのまま見過ごされた可能性が高い。


友人の里美達に警察から何の質問もしてこないところを見ると、やはり携帯彼氏の情報を見逃したということではないか。


「プライバシー保護の徹底のために、勝手に削除される仕組みなのかな?」


由香が視線を落とす。


きっと自分の携帯彼氏のことを思っているのだろう。


思い出として取っておきたくても、それらは跡形もなく消え去ってしまうことになる。


「待って。真由美が自ら削除したってことも考えられるんじゃない? 死ぬ前に、携帯彼氏の情報を残しておきたくなくて、それらの全てを削除したのかも。由香の電話にリクからの着信履歴は残ってる?」


由香は慌てた様子で携帯のボタンをカチャカチャと忙しなく操作する。


「うそ……」


由香の呟きに、里美は着信履歴が消えていたことを悟った。


由香と顔を合わせ、首を捻る。


真由美の携帯からリクの痕跡がないのはなんとか説明できるとしても、由香の携帯からリクからの着信が消えるなんてことがありえるのだろうか。


里美は、折りたたまれテーブルに放置されたままの携帯電話をじっと睨み続けた。

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