第33話

「ダウンロードしても意味なかった。真相は何ひとつ解明できなかった」


里美の言葉に、由香が声を詰まらせながら涙を拭う。


「やっぱり、悲鳴を聞いたことや携帯彼氏のことを、警察に話せばよかった。そうすれば、真由美の死に関する手がかりがつかめたかもしれないのに」


「それはもう言わないって約束でしょ? 司法解剖の結果と現状から真由美の死は自殺と断定された。だから今日無事に真由美を送ってあげることができたんだよ。警察だってバカじゃない。

携帯彼氏のことだって、この携帯電話を調べてみればわかったはずじゃない?」


「そうか!」


里美の言葉を遮り、由香が勢いよく立ち上がる。


真由美の携帯電話を手に取り、里美の目の前に掲げた。


「この中に、リクとのやり取りが残されているはず。それを見れば、2人の間に何があったのかわかると思う」


由香がゆっくりと携帯を開く。


先ほどまでリクが鎮座していた画面は、青空のイラストに変わっていた。


おそらく買ったときに設定されている基本の壁紙なのだろう。


真由美の携帯に残されていた


『愛する人へたどり着くまで未来永劫廻り続ける』

『真実が知りたい?』


という謎のメッセージは、跡形もなく消えていた。


由香が慣れた手つきでメール画面を確認していく。


「ない……。ひとつもない」


「え!?」


「リクとのメールも発着信の履歴もない」


由香は慌てて自分の携帯電話を取り出す。


画面に映し出されている自分の彼氏に目もくれず、メール画面を開いた。


「見て。携帯彼氏からメールが来た場合、こんなふうに受信ボックスに収められるの。

着信だって……ほら、こんなふうにきちんと残るはずなの」


由香の電話には由香の携帯彼氏『雅也』からの履歴がしっかりと残っていた。

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