第5話

いたずらであってほしいと心から願った。


真由美と妹で作り上げた、たちの悪い虚言であってほしいと思った。


真由美は、里美が慌ててやってくるのを妹と2人で笑いながら待っているに違いない。


そう思おうとしても、すぐに不安と恐怖が込み上げて身体全体を支配した。


そう簡単に人間が死んでしまうなんて、わずか20年しか人生経験のない里美にはとうてい考えられないことだった。


真由美の住むマンションが見えた。


携帯電話で時刻を確認する。




午前5時43分。




10階建てのマンションの前は、物々しい雰囲気に包まれていた。

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