第30話 キラボシダンジョン、到着
──
そして半分寝てる状態の風華を引きずり……ようやく僕らはキラボシダンジョンまで辿り着いた。ここまで長かったなぁ……で、るーたんは配信カメラをドローンに切り替えたようで。周辺には、高そうな小型ドローンが浮かんでいた。
乃愛に言われてドローンの設定したし、せっかくなら僕も配信しよう……と、ドローンを取り出していると、るーたんが近づいてきて。
「おおー! ついに慎也お兄ちゃんも配信者デビューだね!」
「乃愛が見たがってたからな。別にるーたん視点とそんな変わらないと思うけど」
「いやいや~、乃愛ちゃんも慎也お兄ちゃんの視点が見たかったんだよ。ちゃんと追尾設定したら、慎也お兄ちゃんばっかり映してくれるよ!」
「……その辺よく分からないから、設定してくれると助かる」
「いいよー。また放送事故起こしかねないしねー?」
るーたんはクフフっと笑ってみせる。あの切り忘れのことを言ってるのだろう……もうあの記憶は抹消したいから、思い出させてほしくないんだけど……で、相変わらず風華はヒナにべったりのようで。酔っ払ったおっさんのごとく、ヒナにダル絡みしていた。
「ヒナちゃんはナビなんだね。よかったら私の将来も案内してほしいな……?」
「見るまでもなくお先真っ暗よ。アンタは家事スキルから覚えなさい」
「えへへ。火事スキルならあるんだけどね」
「なんも上手いこと言えてないわよ……」
そんなやり取りを見つつ、設定してもらったドローンを受け取り……僕は配信を開始させた。同時にコメント欄も開くと『草』と大量に流れていたので、無事配信はできているみたいだ。別にコメ欄必要ないと思うけど、乃愛からコメント来る可能性もあるからな……一応常時出しておこう。そしてるーたんは全員の注目を集めて。
「はい、それじゃあ早速行くよ! このキラボシダンジョンはS級推奨の高難易度ダンジョンで、まだ制覇した人もいないっぽいから……油断せずに行こう!」
「ああ」「ええ!」「にゃぁ……」
『うおおおおおおおおおお!!』
『出陣じゃーーー!』
『一人鳴き声で草』
『まーた難しいとこ行こうとしてんなw』
『新人の動きにも期待やね』
『慎也にぃ視点初めてで楽しみ』
『のあ:初見さんいらっしゃい』
『初見に優しい乃愛ちゃん好きよ』
──
キラボシダンジョン。その名の通り、壁には星型のクリスタルなんかが埋まっており……○ームラボとかにでもありそうな、幻想的な風景が広がっていた。ここがダンジョンでなければ、きっとカップルのデートスポットにでもなっていただろう。
『うおっ!?』
『なんだここ!?』
『はぇー、すっごい綺麗……』
『素敵だね』
『全然ダンジョンらしくないな。逆に不気味だ』
『ダンジョンが油断させに来てるってことだろ』
『え、そういうことかよ怖っ』
チラッとコメント欄に目を通す……なるほど。ダンジョン側が、人間が油断しやすいような風景を作り出してるってことか……これは罠いっぱいのウノダンジョンよりもタチが悪いかもしれないな。
だがそんなことは微塵も考えていないのか、るーたんとヒナは無邪気にダンジョンの感想を口にして。
「うわー、すっごい綺麗だね……!」
「ホント……こんなところ初めて来たわ!」
一方、僕と風華は冷めた口調で。
「こうもキラキラしてると、敵が視認しにくいから不便だな」
「同意~」
『草』
『この対比よw』
『この二人にそういう感性ないから……』
『まぁダンジョンではコイツらの反応が正解だよ』
『慎也にぃイルミネーションとか興味なさそうw』
『わかる』
『(イルミネーションって光ってるだけやん……)』
そんな僕らの反応が面白くなかったのか、るーたんは僕を見ながらジト目で。
「……慎也お兄ちゃんとデートとか行っても楽しくなさそうだね?」
「なんとでも言え。デートなんて、妹としか行かないからな」
「ホント妹ちゃん好きなのね……自立したらどうなるのかしら」
「ふふっ……私はヒナちゃんが好き……だよ?」
「聞いてないわよ」
『草』
『草』
『ボケ役が増えたなww』
『ヒナが過労死してしまう』
『ヒナちゃんのジョブはツッコミだよ』
『俺もヒナちゃんが好きだよ♡』
そんなやり取りをしつつ、続けてるーたんは風華に話しかけて。
「とりあえず今日だけで攻略できるとは思えないから、セーフゾーンまでは行けたらいいね。風華ちゃんの実力も見たいから、敵出たら前に出てね!」
「ふぁあーい……」
そしてヒナの『エネミーサーチ』が反応したらしく、マップを見せながら僕らに敵の報告して。
「……あ、敵の反応よ。高レベルの反応だけど一体しかいないから、アンタたちなら余裕だと思うわ」
「よし、じゃあ風華ちゃんのタンクの力見せてもらおっか!」
「んん……分かった」
そして風華ダルそうに小さな盾を取り出した。それは片手で持てる、非常に軽そうな丸盾で……タンクじゃなくて前衛の剣士とかが使いそうなものであった。本当にこれでみんなを守れるのだろうか……?
「これ?」
「うん、これ。キャプテン○メリカみたいでカッコいいでしょ」
「確かに似てる気はするが……」
「まぁ、見たことないんだけど」
「じゃあ言うんじゃないわよ……」
呆れたようにヒナは言う……そして、次第に敵モンスターは僕らの近くまでやって来て。眼の前には足の生えた、巨大なサメ型のモンスターが現れた。油断すれば一口で飲み込まれそうな巨大な口に、普通ならビビりそうなもんではあるが……。
『うわぁ!?』
『こっわ』
『デカ過ぎんだろ……』
『おしっこちびりそう!!!!!』
『サメ映画に出てきそうだな』
「リクザメね。倒すなら電撃が有効だけど……風華、いける?」
「よゆーよゆー」
怖がる素振りも見せず、風華はリクザメの前にズカズカ歩いていく。それを視認したサメは、風華に向かって突進してこようとするが……。
「ふー……『ねこねこシールド』」
「グギャアッ!!!??」
その小さな盾で、サメの攻撃を弾き返した。その弾かれた衝撃でサメはひっくり返り、ジタバタともがく……いわゆるスタン状態になった。
「おおー、すごい!」
「ずいぶんと可愛らしいスキル名ね……」
「ふふ。突進してくる相手ならこれだけでいいよ。突進系しかない敵モンスターの側でずっと発動してたら、勝手に倒れるから無限にドロップアイテム稼げるよ」
「バグ技みたいなの見つけてんな……」
『草』
『これなら寝ながらでも稼げるな!』
『デバッガーの風華さん!?』
『実際そういう裏技みたいなのは結構ありそう』
『まぁそんな芸当できるの風華くらいだよw』
そんな風華の盾に興味を持ったのか、ヒナは興味深そうに質問をして。
「ね、この盾の耐久とかは大丈夫なの?」
「ちょっとやそっとじゃ壊れないよ。だから敵の攻撃が来たら、私の後ろに隠れて……ギュって抱きしめてね?」
「願望混じってるわよ」
『草』
『草』
『やっぱり変態じゃないか(歓喜)』
『セクハラで解雇されないか心配です』
それでもっと実力を見たいと思ったのか、続けてるーたんは風華にお願いをして。
「ね、風華ちゃん。攻撃も見たいな!」
「えー……それはめんどいなぁ……」
「風華、やりなさい」
「はぁい……」
『草』
『ヒナ「やれ」風華「はい……」』
『ヒナの一声ってか』
『どんな攻撃するんだろう』
『盾振り回すんか?』
確かにどんな攻撃するのか気になるな……と思い、ひょいっと風華を見ると。彼女はトゲの付いた、ナックル的なものを手に装備していて……。
「私が攻撃する時は、このナックルを使うよ。盾でいわゆるパリィ的なのをして、相手が怯んだところに拳を叩き込むって感じかな」
「へぇ、意外ね……」
それで丁度ひっくり返っていたリクザメが復活したようで……また咆哮を上げながら風華に向かって突進してこようとしていた。
「グオォォオオオン!!!!!」
「風華、来てるわよ!」
「……ふふ。コイツをこう払って…………『ねこパンチ』!」
刹那……パリィで体勢を崩したサメの腹部に向かって、風華は超速度のパンチを繰り出した。その攻撃は見事にヒットし、その巨体をものともせずサメは大きく吹っ飛ばされて……壁に打ち付けられて消滅した。
『!?』
『は??????』
『もうやだぁ!! このパーティ!!』
『化け物しかいねぇのかよここ……』
『ホームランコンテストかな?』
『これがタンクって嘘でしょ……?』
「えへへ、討伐かんりょーだね……」
「……」「……」
僕とるーたんは絶句していた。僕ら並に……いや、もしかすると僕ら以上に攻撃力があるかもしれないことを、直感的に悟ったからだ。うん……風華をタンクとして稼働させるの、もったいない気がしてきたんだけど……。
で。それを見たヒナは……またいつかの僕らの攻撃を見た時のように、ドン引きしながら、大声で頭を掻きむしるのだった。
「ああ……普通にその辺のアタッカーよりも火力あるわよ。なんなのよ……なんでこんな変態なのに強いのよ、こいつらは!!!!」
『草』
『草』
『wwwwwwwwwww』
『ヒナちゃん絶望中!』
『「変態なのに」』
『それはそう』
『ヒナちゃんがストレスで死んじゃうンゴ』
『ヨシ、アタッカー三人目だな!』
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