第25話 るーたんもS級じゃなかったっけ?
「フェリナスノヴァ? 聞いたことないわね……」
「そりゃユニークスキルなんて言われてるからな」
ユニークスキルとは……世界で一人しか使えない、特殊なスキルのことである。もちろんユニークスキルを持っている人はレアで、更に有用なユニークスキルを持ってる人となると、その確率はグンと下がるだろう。
まぁS級クランに入ってたくらいだから、浅羽風華のユニークスキルは強い部類だったんだろうな……そこで、琴花さんが解説してくれて。
「『フェリナスノヴァ』は身体能力を著しく向上させる、いわゆる変身スキルだね。攻撃、防御、スピード、魔法……全てが強くなるから、こんなにも多彩なジョブをこなせるんだよ。まぁメインはタンクだったみたいだけど」
「えっ、そんなの最強じゃん……!! 流石S級……!」
「……るーたんもS級じゃなかったっけ?」
「え、そうなの?」
僕は口を挟む。るーたんの実力は知っていたが、まさかS級だとは思わなかった。僕と同じように、あまりランクにこだわってる様子なかったからな……それで、るーたんは「あれ、言ってなかったっけ?」とペロッと舌を出して。
「まぁー、私のS級はあれだよ。ギルドのランクシステムがガバガバな時に上げたから、そんな価値あるものじゃないよ。簡単なシーズンでマスターランクに上がったFPSゲームのバッチみたいなものだよ」
「例えが分かりにくいな……」
度々るーたんってゲームの例え出してくるけど、ひょっとしてゲーマーだったりするのだろうか? ……で、ヒナは浅羽風華へと話を戻して。
「でもそんな強いユニークスキル持ちなのに、なんで追い出されたのかしら?」
「そんな強いスキルにも欠点があったんだろ」
「……あっ、それがどこでも眠ってるってやつ?」
「かもな」
僕は頷く。能力が向上する代わりに、一定時間動けなくなるってのはありがちな強化スキルだし……でも男達の噂話だと、どこでも寝てるって話だったな。なら、単純に反動で疲れが溜まるって仕組みなのだろうか……?
それでるーたんは指を鳴らして。
「じゃあ寝てる人片っ端から起こして、風華ちゃんかどうかを確認していけばいいんだね!」
「るーたんが嫌われてもいいなら、その作戦でもいいけど……」
「いいよ! 好感度-1000が-1001になるだけだから!」
「……」「……」
僕とヒナは目を合わせる。るーたんって明るいけど、なんか節々に闇を感じるんだよな……いくらちょっとワガママだからといって、こんなにも周りから嫌われるような人とは思えないんだけど。やっぱ過去に何かあったのだろうか……?
「……るーたんってなんでそんな嫌われてるの?」
「んー、さあねー? でも私には視聴者がいるから大丈夫だよ!」
それで強がってる彼女をこれ以上見てられないと思ったのか……琴華さんはため息を吐きながら、僕らにアドバイスをくれて。
「……はぁ。じゃあ私から一つだけ助言……といってもこれは独り言だから、君たちに情報を漏洩しているわけじゃないからね?」
「もうパチンコ屋システムいいですって」
そんなツッコミを無視しつつ、琴華さんは小さな声で。
「浅羽風華はダンジョン外でも『フェリナスノヴァ』を発動できる……いや、発動してしまうんだよ」
「えっ?」
「常時発動してるのか、それとも無意識に出るのか分からないけど。彼女は発動してしまう。そして発動している時、『猫耳』が出てしまうんだよ」
猫耳、という単語にるーたんはあからさまに興奮を見せて。
「ええっ!? 猫耳とか……どんな萌え要素!? そんな主人公みたいな子、絶対目立つでしょ!!」
「……でも、彼女は目立ちたくなかったんでしょ」
「そうだね。だからいつも帽子を被ってた。そのことを知ってる人は、クラン内にもいたかどうか分からない……そもそもあんまり喋らない子だったしね」
まぁそんな強いスキルを持ちつつ追い出されたくらいだから、コミュニケーションは上手な方ではなかったんだろうと想像が付く……と、ここでヒナが僕も気になっていたことを尋ねてくれて。
「でもそんな秘密を、なんで琴花さんが知ってるのかしら?」
「僕も琴華さんがユニークスキルについて知ってるのが気になってました。カードからはあそこまで詳細は分からないと思います」
そうやって僕らが問い詰めると、彼女は「うーん……」と少しだけ考える素振りを見せた後……片目を閉じて、『静かに』のジェスチャーを僕らに見せながら。
「…………ま、それは内緒ってことで。はい、これ以上ここいると私もるーたん達も目立っちゃうから、早く行きなー?」
「あっ、うん! ありがとね、琴花ちゃん!」
そうやって僕とヒナはるーたんに引っ張られて、その場を後にするのだった……確かにるーたんの言う通り、彼女はかなりの情報通みたいだな。もっと色々なことを教えてもらいたいが、それにはもう少し仲良くなる時間が必要そうだ……と、引きずられながら思う僕であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます