第22話 ……これだ!!
僕の言葉に、るーたんは嬉しそうに頷いて。
「うん! だから最深部までたどり着いた人はまだ誰もいないっぽい。敵も強くて、S級パーティでも多くの負傷者出てるみたいだし、攻略は簡単じゃないと思う……ま、私達なら大丈夫だと思うけどね!」
「そうだな。じゃあいつ出発するか……」
……と二人で決めていると、焦ったようにヒナが口を挟んできて。
「ちょ、ちょっと、二人とも本気!? S級推奨って、とんでもないところよ!? 負傷者どころか死人だって平気で出るし……しかも新しく出来たばかりのダンジョンなんて、何が起こるか分からないのよ!?」
「まぁでも、僕らがいるから大丈夫だよ」
「うんうん! 私達が護ってみせるから……」
……と、そこでヒナは食い気味に一言。
「毒霧」
「…………」「…………」
途端に僕らは口ごもる……確かにあのボスの毒霧からは護ってやれなかったな。まだあれが微弱な毒だったから良かったものの、即死レベルの攻撃だったらヒナを失い兼ねない出来事だったし……まだヒナは完全に僕らを信用できてないのだろう。
それで、僕らが気まずそうに無言のままでいると……ヒナも悪いこと言ったと思ったのか、ちょっとだけ僕らを励ますように。
「……まぁ、過ぎたことはこれ以上グチグチ言わないわよ。解毒剤もすぐにくれたし。ただ、アタシは慎也達と違って攻撃する術も逃げる術もないことを覚えておいてほしいわ。ダンジョンで真っ先に死ぬのはアタシだろうから」
「そうだな……」
いくらペンダントを装備して魔力が増えたとはいえ、ヒナの戦力が上がったわけではない。自分の生死を他人に委ねてダンジョンに行くのは、やはり相当な勇気がいるのだろう……それでもダンジョンに挑み続けるヒナは、本当に強い子だと思うよ。
でも一回毒を喰らった手前、前回のようにウキウキで僕らとダンジョンに行くのは難しいだろうな……それに推奨Sランクのダンジョンなんて言われたら尚更。探索を止めようとするのも納得だ。
だけどヒナのナビ能力無しで、僕らが完全に探索出来るとは思えないし……かといって、エリクサーのありそうなダンジョンを諦めたくもない。どうやったらヒナが納得してくれるかを考えていると……るーたんがこんな提案を出してきて。
「あ、そうだ。それならヒナちゃん専用のタンクでも探す?」
「タンクねぇ……確かに僕らは攻撃特化のパーティ過ぎるもんな」
「パーティのバランスは明らかに悪いわよ。二人がアタッカーで、しかも得意属性が電撃と闇なんて、尖りすぎてるし……もう一人加えるってのはアタシも賛成かも」
確かにその一人がヒナを護ってくれるのなら、僕とるーたんは戦闘に集中できるから、便利だよな。タンクがいることで、新しい作戦も考えられそうだし……ただ問題なのは、そんな信頼できるタンクなんて簡単に見つからないってことだ。
だがそんなのはお構いなしに、二人は各々願望を口にしあって。
「他にも補助技とか回復とかも持ってたら嬉しいよね! 例えるなら……そう、ヒーラータンクみたいな!」
「あっ、もし加えるなら女の子にしてよね! ……トラウマあるから」
「あ、そう……」
前のパーティで何かされたんだろうか……まぁ前も護られる立場だっただろうし、色々と不満をぶつけられたんだろう。ヒナも気が強いし……。
「でも女の子のタンクねぇ……中々いなそうだな。しかもそこから補助技回復技も使える人となると、もう最強のパーティの中にしかいないだろ」
「まぁそうだよねぇ……そんな最強タンクが、フリーなわけないかぁ……」
「そうね。やっぱりもう少し条件を緩めるべきかも……女の子は確定だけど」
「そこは譲らないんだな……」
……と、そんな諦めムードの中。僕らの隣のテーブルで、興味深い話題を話している男達がいて……。
「なぁお前、聞いたか? 『蒼龍の覇者』の『
「えっ? それって追放されたってことか?」
「そうとも言うか? ……まぁタンクのくせにアレだけ寝てりゃ、追い出されてもおかしくねぇよなぁ。いくらユニークスキル持ちとはいえ、働かねぇんじゃ宝の持ち腐れってやつだ。クランの判断も間違ってねぇだろ」
「違いねぇな」
「…………」「…………」「…………」
……その話を耳にした僕らは、一同視線を合わせる………………こ、これだ!!
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